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世界はトラウマ以前もトラウマ後も本当は変わらない。だが、世界に対する安心感が崩れ落ちる。

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世界がどうあろうと、本来の自分であっていい

トラウマとは、心に深い傷を残す出来事や体験を指します。人によっては、自然災害や事故、虐待や暴力、いじめなどの経験がトラウマになることがあります。そしてそのトラウマによって長期間にわたって脳や心、対人関係、日常生活に支障をきたします。例えば、過去の出来事が思い出されたり、トラウマを負った場所を避けたり、悪夢を見たり、感情が麻痺したりします。さらにはうつ病や不安障害などの精神疾患が引き起こされることもあります。

人間は生きていれば、様々な嫌な出来事や苦痛な事柄に出合います。しかし、そのほとんどは気分転換をしたり、趣味や仕事に没頭したりすることで乗り越えることができます。単純に時間の経過によって忘れ去られたりします。そうすることでトラウマになることはありません。しかし、苦痛な出来事が非常に大きく、心がそれらを受け入れることができなくなってしまうと、長期にわたって、トラウマとして心に残ってしまいます。人はあまりに辛い、苦しい、消化できないような出来事を体験すると、現在を生きれなくなります。

トラウマを受けた方はフラッシュバックといって、過去の事故や暴力の場面が繰り返し思い出されることで、不安や恐怖が募り、日常生活に支障が生じることがあります。また、回避行動といってトラウマ体験と関連する場所や状況を避けることで、恐怖や不安を和らげようとする行動することもあります。たとえば、交通事故のトラウマを抱えている方が車に乗ることを避ける、暴力を経験した方が人混みを避けるなど、日常生活の制約となります。そして、トラウマを経験した方は、何か危険なことが再び起こるのではないかと常に警戒していることがあります。この過剰な警戒心は人間関係にも影響を及ぼし、社会から孤立しがちであったり、人との関係に過敏になってしまったりすることもあります。

過ぎ去った出来事を、昨日の出来事のように感じていたり、過去の傷つき体験や思い出したくもないトラウマで身動きが取れない人も多くいます。あの時、ああしていれば、あんな風にはならなかったのでは‥自分の行動や選択が誤りだったと自分を責めたり、過去の自分の行動や選択を何度も考えて、今の苦しい状況になっていなければ享受できたであろう物事や体験を考えて落ち込んでしまったり‥傷つけられた相手への怒りや恨みが暴発しそうで、考えたくないのに考えてはイライラしてしまったり‥。

トラウマを経験すると、世界に対する安全感というものが崩れ落ちていきます。

トラウマを経験する前は特に怖くはなかったのに、経験してからは、いつどこに落とし穴があるかと思ったり、人から見られること、他者からのジャッジに怯えたりしてしまいます。自分の言動に対して、どこかから誰かが見ていて何か思われるのではないか、どう受け取られるのか不安になります。世界はトラウマ以前もトラウマ後も本当は変わりません。実際には同じですが、安心感が根本的に崩れ落ちてしまいます。

トラウマには色々な感情が整理されずに記憶と結びついています。まるで冷凍保存されたかのように、記憶と感情が圧縮してリアルに保存されています。個々の出来事とその感情がセットになっているために、共通する出来事、似通った出来事で突然、記憶の扉が開き、仕舞っていた感情までもが噴き出し、手が付けられないほどに動揺することもあります。そこに元々の資質や素因、脳のダメージが加わり、複雑に絡まって何が起こっているのかわからないようになっていることもあります。精神科医はその表面上に出ている様態に病名をつけ、その背景までは詳しく見ないことが多いです。

強いトラウマを経験すると、感情を抑えることが難しくなることが起こりやすく、感情に翻弄されてしまいます。それを繰り返していると、感情の波自体が恐怖や不安につながり、些細な落ち込みにも過敏に反応してしまいます。そういう自分に対して罪悪感が湧いたり、自分を責めたりしてしまうことで、さらに苦しくなります。

人的トラウマの場合、最初のトラウマは家族関係から来ていることが多いそうです。そこでの体験が強烈なインパクトを持ってその人の中に残っていて、家庭を出た後もこの人に影響を与えます。そして同様のその体験を彷彿させる状況に出くわす度に、当時の自分を再体験し、当時と同じ反応をすることで、二重三重のトラウマを負ってしまいます。トラウマで症状を出す時、直近の単体のトラウマだけではない別のトラウマが根底にあることがあります。生きれなかった感情、解消できなかった気持ち、疑問、怒り、哀しみが全て一緒くたになって、この人の奥深くに格納されています。

トラウマからの回復の道のり

トラウマが大きすぎる場合、その影響が大きすぎて、それがなければ果たしてどう過ごしていたのか、本来の自分は何を望んでいたのかすらわからなくなっている場合があります。自分の中で何が起こっているかわからないが、とにかくどうしようもなく苦しい‥という状態です。一体どういうことが自分の中で起こっていて、なぜそのように感じてしまっているのか、その原因やカラクリが分からず、自分に原因があり、どうにかできない自分に問題があると思い込んでいる場合があります。また、誰も助けてくれる人が居なかった場合、どうにかその環境の中で生き延びることに必死で、何が普通で本来自分はどう扱われて然るべきなのかもわからなくなります。

人は知らず知らず、自分の目の前の狭い世界のことが全てのように思ってしまい、そこに居る人の価値観に沿えないと、そんな自分が悪いんだ…と思い込んでしまいます。でも本来は人の数だけ感じ方も価値観も異なります。パワハラ、DV、いじめ、毒親にしても、相手の人格的特性や、なぜ彼らがそのようなことをしてきたのかという自分に起こっていることの客観的理解を論理的にしていくことが必要です。なぜそんなことが起こってしまっているのか、自分は何をされてきて、その結果、どういうことが自分の中で起こっていたのかを理解していきます。問題の切り分けを行い、何が自身を苦しめていたのか、なぜ自分はこんなにも怒りを感じたり、不安になっているのかがわかるだけでも、生きづらさが解消されます。

トラウマによって受けた傷の修復を行い、生きれなかった感情を認め労う

トラウマには、“閉じ込められてしまった過去の自分”が存在します。トラウマの解放には、この存在を救い出し、労い、そして生きたかった当時の感情を生きさせてあげることが必要です。また、トラウマによって失ったもの失われた時間を悼み、過酷な体験に自身を労い慈しむ作業も不可欠です。トラウマからの回復の過程で、麻痺させた感情を再生していく必要が出てきます。その際にダムが決壊したみたいに激しく出てしまうこともあれば、直面化によって深い哀しみに圧倒されそうになったり‥もします。麻痺させた、封印してしまった自分の感覚とつながることが何より大切です。

頭の中での理解が済んでも、咄嗟に反応してしまう、似た状況に出くわすと起こしてしまう発作とか生き方の癖というものが出てきてしまいます。それに対する対応も必要です。あの出来事がなければ、もっと多くのことが得られただろうに‥という恨みや怒りも噴き出して来ます。その時の感情に気づいて、そのような感情を抱くのは当然なのだと認めて労います。自分の感情を正当に表現できて、そんな自分を受け入れることができ、それを表現しても否定されないという体験を通して、初めて前を向いて自分のために歩いて行けます。怒りや悲しみのエネルギーは根底に残ったままだと、何かその出来事を彷彿させることがある度に、激しい怒りや悲しみ、モヤモヤ、罪悪感に苛まれます。そんな自分は冷たい、醜いと思うことで、さらに他の人らと自分は違うのだと疎外感すら感じてしまいます。一旦感情に向き合い、生きられなかった感情を感じた後は、自分のされたことへの客観的理解を進めることで、感情に圧倒されることはなくなってきます。

新しいスキーマ(考えや価値観)、行動を身に付けていく

新たな自己を受け入れることも大切な作業の一つです。トラウマ体験以降ずっとやってきた行動を、もう不必要だとわかっていても捨てきれない、ということがあります。それは自分を苦しめてきた行動ではありますが、どこか懐かしさ、慣れ親しんだ自分、使い込んだ愛着のある自分自身であり、どうしてひと思いにバッサリ、サッパリ捨て切れません。このトラウマ的出来事を潜り抜け、生き延びるために身に付けてしまった考えや行動を、本来の自身が望むやり方、本来の自身につながる生き方へと新たに修正していくことが必要です。 トラウマ仕様になっているスキーマ(考えや価値観)行動はトラウマ時には有効ですが、トラウマが過ぎた後は首を絞めたり足枷になる場合があります。

いじめられた経験がある人の例をあげます。 例えば、小さな頃に親に虐待されたり、学校でいじめられても誰も守ってくれなかったりした場合。

この人は以下のような考えを持つとします。「人なんか信じられない」「他人は自分に対して嫌なことをしてくる存在だから信じたらとんでもないことになる」そのいじめの最中にいる時周囲の人間は本当に信用できない人ばかりなので、そう思っていることは自分を守ることになります。「人は信用できない存在だ」という考えは適応的に働きます。しかし、大人になってその環境を抜け出した時「人は信用できない存在だ」という考えは不適応的に働きます。

「人は信用できない存在だ」という考えを持っている人はその考えを持つことによって、人と関わることが難しくなっています。

カウンセリングやスキーマ療法を通して「信用しない方がいい」人も確かにいる。しかし、自分にとって信じられる人もいる、互いに信じあえる人と繋がって共に助け合いながら生きていこうと本来の自身につながる生き方へと新たに修正していきます。自分を守るスキル自体が不足しているため、そのコーピング法も少しずつ身につけていく必要があります。

トラウマ記憶の処理

スキーマ療法

自らの生きづらさを理解し、こころの回復力を取り戻すことを目指します。 スキーマ療法とは、認知行動療法では効果の出ない深いレベルの苦しみを解消するために米国の心理学者ヤングが考案した心理療法です。 認知行動療法では、頭に浮かぶ考えやイメージのことを認知と呼びます。浅いレベルの認知を自動思考と呼び、深いレベルの認知をスキーマと呼びます。 スキーマ療法は、心の深い部分の傷つきやずっと抱えてきた生きづらさなど深いレベルの認知に働きかけ、認知行動療法の限界を超えて、大きな効果を得ることが期待できます。

【スキーマ療法の流れ】
①スキーマ療法についての説明と理解
②サポートネットワークづくり
③セルフモニタリングとマインドフルネスの練習
④コーピングレパートリーづくりとその実践
⑤安全なイメージ・安全な儀式
⑥これまでの人生の振り返り
⑦スキーマとモードの理解
⑧ハッピースキーマづくり・ハッピースキーマ探し
⑨モードワークの練習
⑩スキーマ療法全体の振り返り

この療法では、スキーマ(固定化された思考・感情のパターン)が人間関係や社会環境にどのように影響を与え、それが問題を引き起こすと考えます。まず、患者のスキーマを特定し、それがどのような状況で発生するかを理解します。次に、スキーマが現れる状況や感情がどのように問題を引き起こすかを分析し、適切な対処方法を練ります。治療の効果は、患者が自分のスキーマに気づき、それを変容させることで得られます。そのため、スキーマ療法の担い手であるカウンセラーは、患者に寄り添い、共感的で支援的なアプローチを取り入れることが重要です。

スキーマ療法は、多くの心理的問題や症状に対して効果が認められており、特にパーソナリティ障害やトラウマなどの難治性な症状に対して高い効果が期待できます。

スキーマ療法はとても強力な心理療法ですが、これを実施できるセラピストは本当に少ないのが現状です。私自身はセルフでスキーマ療法に取り組みました。伊藤えみ先生が出版されている「自分でできるスキーマ療法ワークブック Book1」「自分でできるスキーマ療法ワークブック Book2」を使用しました。

自分ひとりでスキーマ療法に取り組むのは、スキーマに向き合うことは、これまでの人生で蓋をしてきたトラウマに向き合うことなので、場合によっては生きていることが辛くなってしまうこともあります。個人差あると思いますが、ただそのぶん効果はあると感じています。

スキーマ質問用紙90問で自己の偏りのスキーマに見当をつける 
スキーマ療法では自己を苦しめている早期不適応的スキーマが明確になることで、自分の生きづらさについての理解が進んでいきます。中には不適応的スキーマの見当がついただけで、自己の思考、言動に予測がつくことで納得できて楽になっているという方もいます。正確性を持たせるためには、多くのワークステップが必要となりますが、スキーマ療法に興味がある方は一度スキーマ質問用紙によるテストを検討してください。

自分でスキーマ療法に取り組む 過去のトラウマ体験が強烈な場合、マインドフルネスがかえってフラッシュバックや感情の過剰反応を引き起こす可能性があります。心の準備ができていない段階で過去に意識が向きやすいマインドフルネスを行うことは避けたほうがよいです。

EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing:眼球運動による脱感作と再処理法)

最近はトラウマ治療でも、トラウマ体験を想起させない療法が採られることがあります。トラウマ記憶への暴露はリスクが高いからです。 
PTSD(心的外傷後ストレス障害)に対して、科学的な研究で症状の改善が報告されている心理療法です。 PTSDの他にも、嫌な記憶に悩まされている等の場合にその状態の改善が期待できます。トラウマ記憶(映像、否定的な自己評価、感情、身体感覚)に焦点を当てながら、25往復程度の素早くリズミカルな両側性の刺激を(眼球運動や聴覚、触覚刺激)を与えて、処理していきます。EMDRは過去の否定的な経験を処理していくので、PTSDだけではなく、うつや恐怖症、パニック障害、不安障害などにも有効であると言われています。また、EMDRでは、すべての過程を言語化しなくてもいいので、トラウマ記憶の細部を語る必要はないので、性被害の方などには抵抗感が和らぎ、比較的ストレスの少ない治療法であるといえます。


【EMDRの流れ】
①クライアントとセラピストの関係の構築
②EMDRのやり方や治療の流れについてカウンセラーと打ち合わせ
③クライアントのトラウマに関連するイメージや思考の特定
④EMDR中・後にいつでも自分を安定させられる方法を作る作業 
⑤悩まされている出来事を思う浮かべながら両側性の刺激を(眼球運動や聴覚、触覚刺激)を与えて、処理していきます。 一般的にはカウンセラーが左右に指をふるのを目で追う。*目でおうことが難しい方:ヘッドホンで左右交互の音を聞く、振動がでる機器を握る方法あり。
⑥この記憶が薄くなり楽な状態に変化
⑦その良いイメージ・状態に集中して、指を目で追う→定着
⑧体に違和感有なら、それに集中して指を目で追う→解消
⑨記憶を消したり「なかったこと」にするのではなく、その記憶を再処理して、単なる昔のことと自然に感じる状態になっているのを確認

TFT(Thought Field Therapy):思考場療法

TFTとは思考場療法(Thought Field Therapy)のことで、鍼のツボをタッピングすることにより心理的問題の症状を改善させていく最新の心理療法です。つぼトントンとも呼ばれています。

私たちが特定のことについて考えた時には、その「思考場」にアクセスしており、そこにストレスや不安などを起こす原因があれば不快感を引き起こします。TFTはタッピングで思考場に信号を送り、不快感を解消することで心理的問題を改善します。 トラウマ体験によって引き起こされる感情が、あまりにも強すぎる場合は、解離というメカニズムを使って、子どもは自分を守ろうとすると考えられています。性的虐待や身体的虐待などのトラウマを体験した子どもたちの19~73%に解離性障害が認められるとされています

TFTは手順が簡単で効果が高く、即効性があり、副作用もありません。一度手順を覚えれば、自分で行うこともできます。具体的には、トラウマの解消、フラッシュバックが起きたとき、なにか不安な気持ちがあるとき、体が痛いとき、イライラするとき、自分を責めてしまうときなどに行います。ひとつの症状に対し、正しいツボを正しい手順で刺激することで、『こころのトゲ』を抜くことができます。つまり症状別で手順が異なります。

つぼトントン手順

FAP療法(Free from Anxiety Program):不安からの解放プログラム

FAP療法の私のイメージはEMDRとTFT(Thought Field Therapy)を組み合わせたものなのかなと感じました。TFTとは、鍼灸のツボを、ある順番でタッピングすることで問題を解決する療法です。
FAP療法は指を押さえるだけという簡単な方法で、どこでも手軽にできるため、効果に個人差あると思いますが、トラウマ治療においては私には効果がありました。トラウマの記憶事態は無くなるわけではないですが、思い出して苦痛に感じる記憶だったものが、思い出しても苦痛を伴わなくなる、という効果が短期間で得られました。手順があまりにも簡単なので、興味がある方は、試してみてください。

最初に治療したい症状や問題を簡単に想起し、その苦痛の程度を0点から10点の範囲で点数化します。

トラウマを思い浮かべながら、もう一方の手の指を使って、指先の付け根(生え際の両脇)を親指から順に数秒間ずつ押します。終わったら次に視線を正面に向け、真っ直ぐに保ちながら意識を左右に移動します。右、左、右、左、というようにそれぞれの側に数秒ずつ意識を向けます。5往復します。
そして再び爪の付け根を順番に押します。(利き手の方が反応がいいようです。)

この手順を2、3度繰り返しても効果が上がらない場合は、治療を阻害する状態にあると考えられるので、治療抵抗の修正法としてへその周囲を人差指、中指で押さえ、10~20秒間呼吸に意識を向けます。
その後再度実施します。
再び、つらさの程度を点数化します。

FAP療法の手順

参考ページ沖縄 心理カウンセリング~潜在意識紀行|心理カウンセリング波詩、加藤詩子様のHPを参考に作成しています。