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反芻地獄(反芻思考が止まらない)から抜け出す 原因と止める方法について

ねこ ブログ

反芻思考とは?

反芻思考(ぐるぐる思考)とは、過去の失敗体験などのネガティブな記憶をあるいは未来に対して否定的な考え想像しそれを体験しているかのように、リアルな感情を伴って思い出し、延々と続いていき、さらに何度も繰り返す、ネガティブな感情を伴った記憶の想起を反芻といいます。あんなことをしてしまった、こんなひどいことがあった、とネガティブな記憶を繰り返し思い出してしまうだけでなく、今、まさに体験をしたかのようなリアルな感情(羞恥、罪悪感、恐怖など)が伴います。反芻とは、牛などの哺乳類が一度咀嚼して胃に送った食物を再び口に戻して繰り返し咀嚼することをさします。ネガティブな出来事を何度も思い返しては落ち込むという行動が反芻に似ているところから「反芻思考」と呼ばれるようになりました。近年の心理学では「反すう思考」がうつ病の原因の一つと考えられています。反芻思考は基本的には脳内現象のため、ただの脳内の想像にすぎないのですが、実体的な感情を伴っていることから、実際に体験したような状態になってしまいます。もちろん脳は実態と想像をある程度区別できますが、そこに感情が伴なってしまうと実態と想像区別がつきにくくなります。そして何度も反芻することで脳がうまくいかなかったと錯覚を起こし、ネガティブな思考が常態化し、自己肯定感が低下し、意欲や集中力も失われ、日常生活にも支障をきたします。この傾向が強い人ほど抑うつや不安に苦しみやすいとの報告が研究機関から出されています。反芻思考を放置すると、私たちの心身に深刻な影響が及びます。反芻思考は誰にでも起こりうる思考ですが、頻繁に起こる場合はうつ病などの精神疾患に発展するケースもあります。症状がひどくなる前にセルフケアをしつつ、抑うつなどの症状がひどくなってしまった場合は早めに病院を受診することが大切です。

マインドワンダリングとは?

脳科学では、今、取り組んでいることとは無関係なことを考えていたり、注意力が散漫になっている状態を「マインドワンダリング(課題無関連思考)」と言います。「雑念」のことを脳科学的にはマインドワンダリングと呼びます。例えば、テレビやパソコンを見ている時や、スマホをいじっている時などに、それとは別のことを考えている状態がマインドワンダリングです。マインドワンダリングが起こると、やるべきことに集中できない、会話がうまくできないといったワーキングメモリが弱い人特有の問題が発生します。それ以上に悪いのは、これがメンタルの悪化とも関係していることです。マインドワンダリングが起きたときに、食事の事やテレビの事などを考えているくらいならいいのですが、多くの場合悪い方向に向かいます。過去の失敗体験などのネガティブな記憶を、リアルな感情を伴って思い出すのです。そう反芻思考です。
反芻すればするほど自己肯定感が低くなり、自分に対してダメなレッテルを張りやすくなります。マインドワンダリングは、すぐにこうした反芻思考につながりやすいため、メンタルにとってはとても危険です。マインドワンダリングが暴走すると、不安や恐怖、怒りを司る脳の扁桃核も暴走します。これによって、脳は覚醒状態になってしまします。そこで、マインドワンダリングを抑えることが必要です。

デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)とは?

人間の脳の重さは、体重の約2%と言われています。脳のエネルギー消費量は一日の全消費エネルギーの20%程度だと言われています。デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)とは内側前頭前野、後帯状皮質、楔前部、下頭頂小葉など、複数の脳の部位から構成される脳回路です。このDMNは、脳が意識的に何もせず、ぼんやりしている時でも脳のエネルギーを消費する神経ネットワークであり、脳の消費エネルギーの60~80%を占めるため脳エネルギーの最大の浪費家に例えられます。

マインドワンダリングで問題なのは、脳の浪費家であるDMNが過剰に活動をしてしまって、何もしていなくても知らない間に脳疲労がたまってしまうことです。「週末は家でぼーっとしていただけなのに、なぜか月曜日の朝から体が重たい」とうことはないでしょうか。 「休息=からだを休めること」だと思い、たっぷり睡眠を取ったり、ゆっくり入浴することなどで疲労回復を望みますが、それだけでは回復しない場合は、体ではなく脳が疲労している可能性があります。
疲労というのは物理的な現象ですが、疲れたと感じているのは、脳自身です。つまり疲労感とは脳の現象にほかなりません。根本の原因は、意識がつねに過去や未来ばかりに向かい、いまここにない状態が慢性化かしていることがあります。脳の疲れは、過去や未来から生まれます。いつも疲れている、将来の不安を感じ眠れない、いろいろなことが気になり集中できない、常に仕事のことを考えてしまい落ち着かない、必要以上に焦りや不安を感じやすい、こういう場合はDMNの活動が過剰になっている可能性があります。終わったことを気に病んでいたり、まだ起きてもいないことを不安に思っていたり、とにかく心がいまここにいない。この状態が慢性化すると脳が疲弊していきます。
このDMNが過度に活動している時が、心がさまよっているマインドワンダリングの状態です。人間の脳は放っておくと、とにかく過去や未来のことを考えようとします。これがDMNの正体です。脳の疲れをとるためには、DMNが過度に優位になっているマインドワンダリングの状態を解除することがとても重要です。DMNの過活動状態が、うつ病や不安障害、発達障害、睡眠障害などと関連があると報告されています。うつ病の患者によく見られる症状に、反芻思考があります。反芻思考はDMNの過剰活動との関連性が指摘されていますが、脳回路の活動を鎮めると、この種の思考の堂々巡りが軽減されます。

反芻思考(ぐるぐる思考)が見られる病気

反芻思考は以下のような障害を持っている場合に見られやすい症状です。

  • ADHD(注意欠陥多動性障害)
  • ASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)
  • うつ病
  • 不安障害
  • 双極性障害
  • 強迫性障害 など

ADHDやASDの特性により他者からの指摘や自身の失敗体験からネガティブな反芻思考に至る場合もありますし、反芻思考の結果として二次障害としてのうつ病などの精神疾患を発症することもあります。

うつ病患者は、DMNの過剰な活動が見られるのが特徴で、過去の失敗などを考えたり、将来への不安や自分は死んだほうがいいんだ、といったことをネガティブな方向に考え、それを無意識に反芻してしまう傾向があります。

ADHDやASDなどの発達障害がある人や発達障害グレーゾーンなど不安神経症的傾向が高い方、HSPなどの外向性が低く内向性が高い方が、反芻思考に陥りやすいということがわかっています。脳の構造的に遺伝的な脳の情報処理が原因であるといわれています。刺激に対する感度はDRD4(ドーパミン受容体)と呼ばれる遺伝子の長さで決まると言われており、内向型はDRD4が短く、刺激に対する許容量が少ないため、刺激に敏感な内向型は自分の内側に意識が向きやすく、主観的に物事を捉えやすい特徴があります。その結果、内向型は物事の原因を自分の内側に求める傾向が高く外交型に比べて反芻思考に陥りやすく、反芻の質も強いです。

遺伝的要素以外にも幼少期の養育、思考の癖、性格的要素、ショックな出来事の遭遇、うまくいかないことが続いた状況などによって反芻思考に陥りすくなると言われています。

反芻思考の種類

反芻思考は、全てが悪いわけではありません。

反芻思考には「リフレクション(Reflection)」と「ブルーディング(Brooding)」の2種類があります。

リフレクション(Reflection)

リフレクションは、「なぜ自分はこんな失敗を繰り返すのだろう」とネガティブな出来事の原因を自分の内側に求める反芻思考のことで、分析的な特徴があります。失敗した原因を自己分析することで同じ失敗を回避することにもつながります。自己内省をすることで、自らを変化させたり、自己成長させることにつながります。また、リフレクションはうつ病との関係性も低いとされています。

ブルーディング(Brooding)

ブルーティングは「自分が失敗を繰り返すのは自分が無力な人間だからだ」「障害を持っているからだ」「こんな身体に生まれていなければ」など、ネガティブな出来事の原因を自分の置かれた環境に求める反芻思考で、不満的な特徴があります。

ブルーディングはうつ病との関係性も高いとされています。
うつ病になりやすい人の反芻思考は、自分の欠点や過去の失敗といったどうしようもないことや、ネガティブなことをずっと考え続け、こうした傾向が強い人ほど、抑うつ状態や不安に陥りやすいです。

反芻思考の止め方

反芻思考によって抑うつなどの症状がひどい場合は、病院で治療を受ける必要があります。

反芻思考の止め方としては、「認知行動療法」「マインドフルネス」「薬物療法」「ワーキングメモリを鍛える」の選択肢があります。

認知行動療法

認知行動療法(CBT)は、反芻思考を改善するための有効な治療法の一つです。物事を否定的に捉えてしまうクセがあると、常に過去の出来事に捉われたり、将来に対する不安から、目の前の事柄に意識を集中しにくくなります。また、上手くいかないことが何度も続いたりすると、 「次もうまくいかないだろう」と勝手に思い込んだり、ネガティブな自動思考によって「もうダメだ、もう死ぬしかない」と不安や恐れなどの否定的な感情が湧き起こってきます。また、何か嫌なことがあっても、 「また同じことが起きる」などと決めつけて、気持ちを前向きに切り替えることができにくくなります。うつ状態がひどい場合は思考が白か黒か、ゼロか100か、そのどちらかに向いてしまうこともあります。物事をありのまま受け止めるのではなく、否定的なイメージや感情を伴った自動思考を巡らせてしまいます。認知行動療法は不適切な思考パターンを見つけ出し、何かが起こったときに瞬間的に不適応になってしまう考え方によりバランスの取れた物の考え方になるように幅を持たせる治療方法です。

医師やカウンセラーなど、専門家のもとで行う治療だけではなく、自分で取り組んでも治療効果があるとされています。

マインドフルネス

マインドフルネスとは評価や判断を加えずに、「いまここ」の状態に対して能動的に注意を向けることで意識が集中している状態を指します。簡単に説明すると瞑想をベースにした脳の休息法です。過去や未来から来るストレスから解放されることが、マインドフルネスの目的です。マインドフルネスを実践することで、反芻思考に陥っている自分に気づき、あれこれと考えすぎている自分から距離を置くことをトレーニングします。これにより、反芻思考でネガティブな気持ちになってしまう頻度を減らしていきます。

マインドフルネスは誰でも、いつでも、どこでもできるのが特徴です。人間の脳は何歳になっても、その使い方次第で、絶えず自らを変化させていきます。これを脳の可塑性といいます。マインドフルネスを習慣的に継続していれば、脳の一時的な働き具合のみならず、構造そのものを大きく変わっていきます。あるグループの研究によると、マインドフルネスによって大脳皮質が厚くなったという報告もあります。脳疲労への対処療法だけではなく、予防法にもなりえます。

マインドフルネス瞑想とは、仏教的な自己観察方法を取り入れつつ、宗教色を減らし、修行の要素を排除し、瞑想のプログラムを中心にメソッド化したものです。
マインドフルネス瞑想をすると、脳のバランスが整い、脳疲労を引き起こすDMNの過剰活動が抑制されます。マインドワンダリングを抑えられ、その結果、エネルギーの浪費が少くなくなって脳の疲労が解消され、脳機能が改善されていきます。最初は一人だけで瞑想をするのは難しいため、youtubeのマインドフルネス瞑想の動画みて一緒にやるのがおすすめです。

マインドフルネス瞑想

①リラックスした状態で呼吸に意識を向ける
目を閉じてリラックスし、ゆっくりとした自然呼吸を続けます。自分の呼吸に意識を向けながら、息が体の中に入ってくる感覚を感じるようにします。
②雑念に気づいたら呼吸に意識を戻す
雑念が湧いてきても、それを止めようとはせずに、 「雑念が湧いている」と気づいて、呼吸に意識を戻して、深い呼吸を繰り返していきます。
③体の感覚に意識を向ける
呼吸とともに、足の裏が床についている感じや、お尻が椅子についている感じ、背筋がすっと伸びている感じなど、体の感覚に意識を向けることで雑念にとらわれなくなります。
頭がスッキリしてきたら、最後は瞼の裏に注意を向けながらゆっくりと目を開けます

薬物療法

反芻思考の原因の1つに、脳内物質の乱れがあります。脳疲労の原因には、覚醒状態が続き、反芻思考によって脳を酷使してしまったことが関与しています。心理的葛藤を生む原因になったストレス要因から離れることが可能であれば、一刻も早く脳を休める環境を作ることが大切です。

反芻思考に対する薬物療法は、通常、うつ病や不安障害などの基礎疾患に対する治療の一環として行われます。以下のような薬が一般的に使用されます。

抗うつ薬:SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)がよく使われます。これらの薬は、脳内の神経伝達物質のバランスを整えることで、反芻思考を軽減する効果があります。
抗不安薬:ベンゾジアゼピン系の薬は、不安を和らげる効果がありますが、長期使用は依存のリスクがあるため、医師の指導のもとで使用することが重要です。

難治性の場合には、抗うつ薬を変更する以外にも、複数の薬剤を組み合わせる方法も有効です。SSRIやSNRIにNaSSAを追加する方法や、非定型抗精神病薬(クエチアピン、エビリファイ)を追加する治療も効果的であることが分かっています。最近では、非定型抗精神病薬の一つ、レキサルティも抗うつ薬の効果を高めることが報告されています。特に、うつ病や不安障害の治療において、反芻思考を軽減する効果が期待されています。

私個人的に反芻思考が止まらず、苦しんでいた時にレキサルティが処方され、今までの脳の覚醒状態が落ち着き、一日中続いていた反芻思考が止まるなど、色々と対策をしてきましたが、レキサルティが一番、効果がありました。レキサルティ(ブレクスピプラゾール)は、第二世代の抗精神病薬で、統合失調症やうつ病、双極性障害などの治療に使用されます。この薬は、セロトニンとドパミンの働きを調整することで、気分の安定や幻聴、妄想の改善に効果があります。
※同じ薬の、同じ量を飲んでも、人によって効き目が違うことがあります。これはあくまで私個人の感想であり、薬の効果を保証するものではありません。また、同じ脳は2つとなく、反芻思考の頻度や質などの症状は人によって異なるため、変化や改善に気づくのにかかる時間もさまざまです。

ワーキングメモリを鍛える

ワーキングメモリとは短期記憶の事ではなく、短期記憶を含めた情報処理能力のことです。ワーキングメモリが弱い人はマインドワンダリングと呼ばれる思考が増えると言われています。前頭前野が発達していると、不安や恐怖、怒りを司る扁桃核の暴走を抑えることができます。ワーキングメモリは前頭前野の中心となる機能ですから、これが強い人は不安感やイライラに振り回されにくく、情緒が安定しやすいです。
卵が先か、ニワトリが先かという話で、「ワーキングメモリが弱いからメンタルの病気になる」とも「メンタルが悪化したからワーキングメモリが低下した」とも考えられます。ワーキングメモリが低下していると、扁桃核を抑えることができないため、日中も不安や憂うつに悩まされることになります。もちろん、マインドワンダリングと反芻も増加します。

以下のような方法がワーキングメモリを鍛えることができます。

運動:ワーキングメモリを向上させるためには、運動が効果的です。特に、高強度の運動(HIFT: High-Intensity Functional Training)が有効であることが研究で示されています。HIFTは、有酸素運動と無酸素運動を組み合わせたもので、短時間で高い効果が期待できます。また、有酸素運動(ウォーキングやジョギングなど)もワーキングメモリの強化に役立つとされています。

逆復唱:何かを記憶して、それを基に情報を処理を行うワークが有効です。耳で聞いて記憶した言葉を逆復唱します。最初は単語レベルの逆復唱からはじめ、例えば、広島と聞いたら、「ましろひ」と逆復唱するのです。単語レベルの逆復唱に慣れてきたら、文章レベルの逆復唱にも挑戦しましょう。

ジャグリング:ワーキングメモリ開発に効果があることが分っています。ジャグリングしながら逆復唱のトレーニングをやると、さらに効果的です。もちろん日本のお手玉でも構いません。

反芻思考の対策

反芻思考に陥っていると感じた場合に自分でできる対策があります。

自分が今反芻していることに気づく(メタ認知を鍛える実況中継)

反芻思考をやめるためには、自分を客観視し、今の自分の状態、自分が今反芻していることに気づくことが大切です。そして、その状態に気づいたら、考えていた内容を要約します。もしあなたが何かについて反芻思考し始めたなら、そのことに気づきましょう。そして声に出して「わたしは○○について考えている。」とつぶやいてください。その後、また時間が経って、同じことを考えていることに気づいたら、「わたしは○○について考えている。」と再度声に出してつぶやいてください。声に出すのが難しい場合は心の中で大丈夫です。次々と浮かんでくる否定的なイメージ、思考、感情を逐一、実況中継していきます。反芻をして不安になったり落ち込んだりしている私がいるなと自身の事を客観的に見ることが大事です。このように要約したフレーズをつぶやくだけで思考に埋もれていた自分を明確化するとともに、思考そのものから距離を置くこと、思考を客観視することが可能になり、メタ認知(悟り)が鍛えられます。この目的は反芻を「止めること」ではなくて、自分が反芻しているという事実に「気づくこと」です。この実況中継を習慣づけることによって、メタ認知の能力が鍛えられていき、マインドワンダリングが減少します。

焦点のコントロールをする(ポジティブな脳の回路を作る)

いつもネガティブなことばかり考えていると、脳の中に不愉快な考えや不安に通じる高速道路ができてしまいます。脳を長い間不安や恐ればかり見るように訓練してしまいます。反対に、喜びや快活さに通じる道は細くなります。脳にとっては、安らぎより不安を生み出す方がずっと簡単なのです。私たちのものの考えに応じて、頭の中には絶えず新たなネットワークが作られています。ポジティブな感情を保存するシナプスをできるだけ多く作れば、私たちの脳も日々の使われ方に応じて変化してきます。注意制御機能を整える訓練が必要です。いいことがあった、これが好きだ、この人に会いたい、目標にしていることや達成したいことなどのポジティブな情報を書き出し、それを一日の中で定期的に眺めます。ほかにも嬉しいことや、新しい体験を話す場を作るようにしましょう。そして、反芻している際にセットでポジティブな映像や記憶や人を思い出すようにします。セットで思い出したうえで、「また反芻している私がいるな」と客観的に見ます。これを毎回やっているとスピードが速くなります。別々の記憶がひとつのまとまった記憶になることで、嫌なことを反芻してもて多少は楽になっていくことが多いです。

タッピングを行う

過去の失敗体験の記憶が蘇ってきたら、同時に、両足の太ももを交互に手でパンパンと、軽い力でたたきます。あるいはあえて意識的に失敗体験を思い出しながら太ももをたたいてもいいでしょう。失敗体験を思い出す脳内の処理と、太ももをたたく脳内の処理がバッティングします。結果、失敗体験の記憶にネガティブな感情を伴わせるという情報処理が追いつかなくなります。タッピングをしながら反芻することは脳からしてみると困難な課題です。思い出しても、そこにネガティブな感情が伴わなければ、それはただの記憶にすぎません。これを何度も繰り返すことによって、次第に失敗体験の記憶にネガティブな感情がひもづけされなくなっていきます。重度のトラウマやフラッシュバックにはタッピングを進化させたEMDR(眼球運動による脱感作処理)と呼ばれる手法やFAP療法といものがあります。FAP療法は自分でどこでも手軽にできるため、効果に個人差あると思いますが、私には効果がありました。

反芻をしてもよい時間を決める

ある一定の時間だけは徹底的に反芻してもいいと許可を出す、そのときまで思考を後回しにしておく研究では、不安になる内容と考える時間を何時から何時までと決めておくことによって全体的なネガティブ思考の量が減り、クリアに考えられるようになったと言います。
その時間に反芻すればよいという安心感が生まれ、安心感が生まれることで全体的な反芻が減っていきます。反芻をゼロにしていくのではなく、反芻してしまうときは反芻してしまうのは仕方ないと思うことも大切です。1日の中で反芻をしてもよい時間決めて部屋の見える場所にその時間帯を張ったり、携帯のリマインダーでその時間にアラームを設定するのもおすすめです。

何か一つの言葉を延々と唱える(忙しくする)

脳の情報処理資源に余裕があると反芻が起こりやすくなります。悩み事を無くす一番の方法は忙しくすると言いますが、良い意味で脳の情報処理資源に負荷を与えることで反芻が少しは減っていきます。四六時中忙しくするのは大変なので、簡単な方法として同じことを延々と唱えることが挙げられます。
何か一つの言葉を延々と唱えるということで、その言葉を出すという方向に情報資源が行くため、自分の中でそのことを以外の事を考えるのが少し難しくなります。可能であれば口に出してください。念仏でも歌の歌詞でもよいし、ありがとうでもいいですし、おすすめなのは「私はわたしを愛している」や「私は、あるがままでいい」などのアファメーションです。アファメーションとは、ポジティブな言葉や文章を意識的に自分に向けて繰り返し言い聞かせる行為を指します。簡単に言えば、自分自身を励ますための言葉やフレーズを用いて、自分の心の中や考え方をより良い方向へと導く手法の一つです。自分の心の中のネガティブな思考や感情を打破し、ポジティブなエネルギーを増やしていくことができます。
また、感謝の瞑想もおすすめです。脳の情報処理資源に余裕があると反芻が起こりやすいので、複数の事を同時にやったら多少は反芻が楽になるのではないかという思いから私は感謝の瞑想をやっていました。イヤホンをつけてyoutubeでリラックスできる自然の音楽を聴いて、目をつぶり、今まで出会ってきた人の中から家族、友人、知人、恩師など私を支えてくれた人の顔を一人ずつ想起して声に出して「ありがとう」と唱えていました。ひたすら想起、ありがとうの繰り返しを体調に合わせて5分から15分ほどやっていました。

ジャーナリング

ジャーナリングとは、頭の中にある思考や感情を紙に書き出す行為です。これにより、思考が整理され、反芻思考が軽減されることがあります。またカナダの大学の研究では、頭の中にあることを書き出すことでワーキングメモリの負荷が減りパフォーマンスが向上することが判明しています。

気をそらす

反芻していると気づいた時は、意識的に他のことに集中するようにします。例えば、今やろうとしたことに意識を向けなおしてみたり、深呼吸をしてみたり、周りの音に耳を傾けてみたりするのもよいと思います。自分の好きなものを見る、読む、体を動かすなど、今あなたを悩ませていること以外の何かに注意をそらしましょう。反芻していること以外を「考える」よりも、身体を使った「行動」の方が、注意をそらすのが簡単です。「考えないようにする」と、かえって考えてしまうものですから、「考えないようにする」のではなく、「別のことをする」のです。私のおすすめの方法は掃除や編み物、マッサージ器を使ったマッサージです。

身体を動かす

身体を動かすことも効果的です。適度に息が切れる程度の運動を行うと、反芻思考をはじめとする種々の精神疾患の症状が改善しやすいことが研究で分かっています。
ジョギングや筋トレ、またバランスが必要なヨガのポーズなどは、その行為自体に集中する必要があるため、反芻思考のスパイラルから出やすくさせてくれます。特にジョギングやヨガで足の裏の感覚や伸びた箇所の体の感覚に意識を向けることで歩行瞑想やマインドフルネス瞑想につながります。40分~60分行えると理想的です。

反芻思考の原因から遠ざかる

反芻思考の原因がはっきりと分かっている場合は、原因と距離を置くのも解決策の一つです。
自分がどういう時に反芻思考に陥っているのか、一度書き出してみましょう。
時間、場所や人物など、反芻思考に陥る特定のパターンがあるようなら、一時的にそれらの対象を遠ざけるのも一つの手段です。大事なのは不安から逃れることではなく、好きな仕事や人々と関わりを持つことです。

場所を変える

家の自室で何度もネガティブな考え事をしている場合はネガティブな記憶と場所がリンクしていることがあり、反芻しやすい場所となっている可能性があります。そういう場合はお気に入りの場所や落ち着ける場所に移動します。公園に行く、近所を散歩する、静かな喫茶店に移動するのもよいでしょう。

自然と触れ合う

スタンフォード大学が行った、自然環境と都市環境で90分間散歩するという調査では、自然環境での散歩は都市環境での散歩と比べて反芻思考の回数が減少するという結果が出ています。自然環境の中で散歩したり、定期的に緑のある公園でゆっくりする時間を取ることが大切です。また、部屋の中に観葉植物を置く だけでも癒し効果は得られるそうです。なおこの観葉植物なのですが、切り花ではなく土に植えられた鉢植えの方がより良いです。

FAP療法(Free from Anxiety Program)

反芻することによってトラウマが強化されることがあります。その対策として、タッピングの章でご紹介したFAP療法についてもう少し詳しく記載致します。
FAP療法の私のイメージはEMDRとTFT(Thought Field Therapy)を組み合わせたものなのかなと感じました。TFTとは、鍼灸のツボを、ある順番でタッピングすることで問題を解決する療法です。
FAP療法は指を押さえるだけという簡単な方法で、どこでも手軽にできるため、効果に個人差あると思いますが、トラウマ治療においては私には効果がありました。トラウマの記憶事態は無くなるわけではないですが、思い出して苦痛に感じる記憶だったものが、思い出しても苦痛を伴わなくなる、という効果が短期間で得られました。手順があまりにも簡単なので、興味がある方は、試してみてください。

最初に治療したい症状や問題を簡単に想起し、その苦痛の程度を0点から10点の範囲で点数化します。

トラウマを思い浮かべながら、もう一方の手の指を使って、指先の付け根(生え際の両脇)を親指から順に数秒間ずつ押します。終わったら次に視線を正面に向け、真っ直ぐに保ちながら意識を左右に移動します。右、左、右、左、というようにそれぞれの側に数秒ずつ意識を向けます。5往復します。
そして再び爪の付け根を順番に押します。(利き手の方が反応がいいようです。)

この手順を2、3度繰り返しても効果が上がらない場合は、治療を阻害する状態にあると考えられるので、治療抵抗の修正法としてへその周囲を人差指、中指で押さえ、10~20秒間呼吸に意識を向けます。
その後再度実施します。
再び、つらさの程度を点数化します。

参考書籍
ブレイン・マネジメント 脳を自由自在に操る科学的メソッド
脳疲労が消える 最高の休息法[CDブック]――[脳科学×瞑想]聞くだけマインドフルネス入門
本当の私よ こんにちは FAP療法で過去を手放し「今」を生きる