「自立支援医療費(精神通院医療)制度」とは
通院によって精神障害の医療を受ける場合に、保険適用後の自己負担分を公費で補助する制度です。
※本記事では、制度名を分かりやすくするため、『自立支援医療(精神通院医療)』を『自支援医療』と略して表記する場合があります。
対象となる方
精神疾患により、継続的な通院による精神療法や薬物療法の治療を受けている方。
対象となるもの
病院又は診療所で行われる医療(・診察費 ・薬代 ・デイケア費用 ・訪問看護費用)
入院しないで行われる医療が対象であり、入院は対象外です。また、精神科通院にかかる医療費以外の医療費(内科診察代、風邪薬、湿布など)、 医療保険が適用にならない(診断書料、予約料、通院などの交通費)、病院や診療所以外でのカウンセリングなどの負担分も対象外です。胃薬などの精神障害の治療薬の副作用のための処方であれば対象となります。自立支援医療は健康保険の療養に要する費用の額から算定します。そのため、健康保険の対象とならない支払いについては対象外です。
自立支援医療制度を行う医療機関は、あらかじめ予定された医療であること、質の高い医療を確保することなどから、指定制度となっています。指定自立支援医療機関として広島県の都道府県知事・広島市市長の指定された医療機関の中から利用者があらかじめ選択した医療機関(デイケア・薬局・訪問看護ステーションを含みます。)でのみ、自立支援医療の適用になります。受給者証に記載されていない病院・薬局等では適用になりません。すべての病院で利用できるわけではないので、注意が必要です。
申請する際は、通院している医療機関が「指定自立支援医療機関」に該当するかご確認ください。通院している医療機関またはお住まいの市区町村の障害福祉課などの窓口で確認できます。役所の窓口に自立支援医療機関(精神通院医療)リストがありその中から希望する医療機関(デイケア、薬局、訪問看護ステーションを含みます。)を選択することができます。また、原則として指定できる病院・薬局・訪問看護ステーションなどはそれぞれ一箇所です。なお、指定医療機関(病院、診療所)については、追加が認められる場合もあります。申請の際には、医師の理由書が必要になります。
利用者の負担について
認定を受けると医療費の自己負担割合は原則1割となります。ただし、所得や障害の程度により上限額が設定された場合は、毎月その上限額までの負担となります。これは、1割負担であっても、医療費が高額になった場合に、それ以上自己負担が増えないようにするための仕組みです。
上限額の種類: 上限額は、いくつかの所得区分に分かれており、例えば、「生活保護」「低所得1・2」「中間所得」「一定所得以上」などがあります。また、重度かつ継続に該当する場合には、さらに細かく上限額が設定されることがあります。
広島市に住民票があり、他の制度により医療費の自己負担のない方については、別に「広島市精神障害者通院医療費補助制度」があり、自立支援医療の対象となる精神科・心療内科の医療機関における医療費の自己負担(原則1割)が無料になります。 これは、広島市独自の支援制度によるものです。
なので、基本的には広島市に住民票があり、自立支援医療をお持ちの場合は精神通院の際に必要な医療費の自己負担はなくなり、無料となります。自立支援医療とこの補助制度を併用することで、精神疾患のある方が経済的な負担を心配することなく、安心して医療を受けられる環境が整っています。
※詳しくは以下の広島市ホームページからご確認ください。
自立支援医療費(精神通院医療)について
「広島市精神障害者通院医療費補助制度」について
広島市で自立支援医療費(精神通院医療)の申請をされる方で広島市に住民票を有し、医療保険による自己負担分の補助を受けていない方は、申請により自立支援医療費(精神通院医療)の自己負担分について広島市が補助を行います。※他の制度により医療費の自己負担のない方が申請できます。
「重度精神障害者通院医療費補助」について
精神障害者保健福祉手帳1級を所持している方(自立支援医療受給者証【精神通院】も所持している方に限る)に対しての通院に係る医療費の補助があります。市が交付する「重度精神障害者通院医療費受給者証」と健康保険証を医療機関の窓口に提示すれば、入院以外の診療を無料で受けられます。
その他市町村の場合の負担上限額
広島市に住民票を有し、自立支援医療を受けられている場合は医療費の自己負担がなくなり、基本的には無料となります。市町村によって自立支援医療制度の仕組みにが違いがあり、負担額はお住いの市町村によって異なります。 広島県内の他の市町村の状況として、広島市と同様に海田町では自立支援医療費(精神通院医療)の申請をされる方で海田町に住民票を有している方は、申請により自立支援医療費(精神通院医療)の自己負担分について海田町が補助を行うため、医療費の自己負担がなくなり、基本的に無料となります。※令和8年3月末の診療分をもって、海田町が行う補助の制度が終了します。
広島県の場合は医療費の自己負担は3割ですが、自立支援医療(精神通院医療)を利用することで、医療費が原則1割負担になります。他市町村における自立支援医療(精神通院医療)の自己負担上限額は原則1割負担: 医療費の自己負担割合は、原則として1割となります。所得に応じた上限額設定: 所得区分に応じて、毎月の自己負担上限額が設定されます。
所得区分と上限額の例(全国的な目安):
以下は一般的な所得区分と負担上限額の目安ですが、自治体によって細かな設定が異なる場合があります。また世帯の所得に応じて1カ月あたりの自己負担額に上限があり、上限を超える額は支払いが不要になります。所得の状況に応じて月額の自己負担上限額が異なり、上限金額は支払っている市町村民税の金額によって6つの区分に分かれます。上限額は世帯の収入と症状(「重度かつ継続」に該当するかどうか)によって異なります。「重度かつ継続」とは気分障害などにより医療費がさらに高額で、長期間の治療が続く場合のことです。月額負担上限額が設定されている方には、「自己負担上限額管理票」が交付されます。
広島市は自立支援医療制度とは別に前述の補助制度により、自立支援医療の対象となる精神科・心療内科の医療機関における医療費の自己負担(原則1割)が無料になります。ただし、今後もしかすると広島市でも制度が変化される可能性があります。
自立支援医療制度は、社会情勢や医療制度の見直しなどにより、内容が変更される可能性があります。この記事は令和7年5月時点での情報を基に作成しています。最新情報が必要な場合は広島市役所の公式ウェブサイトや窓口でご確認をお願いします。
厚生労働省の自立支援医療
申請に必要なもの
・自立支援申請書
・診断書兼意見書(主治医が記入します)
・健康保険証の写し
※保険の種別(国民健康保険・後期高齢者医療保険)や扶養の関係でご家族全員の保険証の写しが必要な場合があります。
・印鑑
・「世帯」の所得状況等が確認できる書類
・個人番号及び身元を確認できるもの
※受診者が18歳未満の場合は受診者は障害者本人ですが、保護者が申請者となります。
社会保険の場合:
- 被保険者本人のみが申請する場合: 被保険者本人の健康保険証の写しが必要です。
- 被保険者本人と扶養家族(お子さんなど)が一緒に申請する場合:
- 原則として、申請する全員分の健康保険証の写しが必要です。
- 例えば、被保険者である親と、その扶養に入っているお子さんが一緒に申請する場合は、親とお子さんそれぞれの健康保険証の写しが必要です。
国民健康保険の場合:
世帯全員が加入しているため、申請する方だけでなく、国民健康保険に加入している家族全員の健康保険証の写しが必要です。
※上記以外にも書類が必要となる場合があります。 念のため、申請先の区保健センターに確認してください。
申請窓口
お住まいの区の保健センター(福祉課障害福祉係)
申請の流れ
①主治医に自立支援医療制度を受けることを相談し、診断書を依頼します。
↓
②お住まいの区の保健センター(福祉課障害福祉係)へ行きます。
↓
③窓口にて申請書を記入・押印し、必要なものを提出します
↓
④約1〜3ヶ月後、自立支援医療受給証が手元に届きます。
↓
⑤受診時にかかりつけの医療機関へ提出します。
もし、申請から3ヶ月以上経っても受給者証が届かない場合は、申請をしたお住まいの区の保健センター(福祉課障害福祉係)に問い合わせて状況を確認してください。
有効期間及び更新について
有効期間について
新規申請は、区保健センターが申請書を受理し日が基準となり1年以内の最も近い月末日が有効期限となります。そのため、自支援医療(精神通院医療)は1年ごとに更新する必要があります。
自立支援医療(精神通院医療)の新規申請において、明確な「締め切り日」というものはありませんが、診断書には一般的に有効期限が設定されています。多くの場合、医師が診断書を作成した日から3か月以内に申請を行う必要があります。これは、診断書の内容が時間の経過とともに変化する可能性があるため、最新の状態を示す必要があるからです。
診断書が発行されてから3か月を超えてしまうと、原則としてその診断書は申請に使用できなくなり、再度、医師に新しい診断書を作成してもらう必要があります。例えるなら、処方箋にも有効期限があり、期限を過ぎると薬を受け取れなくなるのと似ています。
更新申請(再認定)は、有効期限の3か月前から申請ができます。有効期間は継続して1年間です。
更新について
自支援医療(精神通院医療)は1年ごとに更新する必要があります。更新は役所の障害福祉課などの窓口で行います。受給者証には有効期限が記載されており、有効期限終了の3ヶ月前から更新手続きができます。更新申請をする場合の自支援医療(精神通院医療)の明確な「締め切り日」は、現在の有効期限日となります。 有効期限が切れてしまうと、原則として新規申請扱いとなり、再度診断書が必要になるなど、手続きが煩雑になる可能性があります。
更新申請に関して、事前に広島市から個別での知らせがありません。受給者証の有効期間をご自身で確認する必要があります。病院によっては、病院の受付窓口で自立支援が期限近くになっていると教えてくれることがあります。医師の診断書は、発行までに時間がかかる場合がありますので、早めに主治医に相談してください。
病院・薬局・訪問看護ステーションを利用するたびに受給者証を提示する必要があります。
更新で必要なもの
・申請書
・印鑑
・診断書(※2年に1回必要)
・受給者証(新しいものと交換してもらいます)
・健康保険証
・個人番号及び身元を確認できるもの
申請すると1年ごとに更新が必要で、診断書は治療内容に変更がない場合、2年ごとに自立支援医療診断書が必要になります。
そのため、初めての更新ではほとんど必要ありません。
更新をせずに期限が切れてしまった場合
有効期限終了までに更新ができなかった場合は、「再開申請」の手続きが必要になります。
このときは更新と異なり、必ず医師の診断書が必要です。
有効期間を過ぎてしまうと、再申請するまでの間は自立支援医療が受けられなくなります。期限切れから再開までの間に病院に行った場合の医療費は3割負担となります。この場合、医療費の払い戻しを受けることはできないため注意してください。
変更等の手続
申請の場合は受給者証受け取りまで数か月かかりますが、変更手続きの場合は当日にもらえるケースが多いです。
また、課税状況などの確認に時間がかかる場合があります。手続きの際は、ゆとりを持って行くようにしましょう。
指定医療機関の変更等
転院した場合や薬局を変更したい場合など利用する指定医療機関を変更する場合には、認定内容変更の申請が必要です。変更申請の受理日から有効となり、新しい医療機関において、自立支援医療を利用することができます。(日付のさかのぼりはできません。)
健康保険の変更
就職・離職などから、保険証が変わった場合には内容変更の申請が必要です。
住所・氏名等に変更が生じた場合
住所・氏名が変わったとき場合には変更を確認できる書類等が必要です。
受給者証等を紛失等した場合
受給者証を誤って紛失してしまったときは、市区町村の窓口で再交付手続きが必要になります。
医療費の払い戻しについて
申請書の控えで受給者証の代用ができる場合
受給者証が届くまでの期間、自立支援医療の申請書の控えを受給者証の代用として使用できる場合があります。
代用できる病院と代用できない病院があるようです。一部の病院や薬局では代用できない場合は3割負担(健康保険を適用の場合)となるため、受給者証が届くまでの間は医療費の出費がかさみます。代用はすべての医療機関で適用されるわけではないようです。そのため、事前に病院の窓口に確認する必要があります。
申請書の控えで受給者証の代用ができない場合
自立支援医療(精神通院医療)の申請中に医療機関を受診した場合、手元に受給者証が届くまでの間、指定医療機関で医療費の3割(健康保険のみ利用)を支払いますが、受給者証が届いた後に負担した医療費の払い戻しを受けられます。払い戻しには3割負担で医療費を支払ったときの領収書の原本、受給者証、が必要です。
その場合は受給者証発行後、各医療機関にて払戻しの手続きをしていただくこととなります。医療機関で払戻しは多くの場合その場で返金してもらうことができます。払戻しの対象となるのは、受給者証の有効期間内で、自立支援医療(精神通院)の新規・更新・変更等のご申請をされてから、受給者証が届くまでの期間のものです。
まず、その間におかかりになった病院・診療所、薬局、訪問看護ステーションにご相談ください。
払戻しの対象とならないもの
□ 受給者証の有効期間の開始日以前の領収書
□ 精神科通院にかかる医療費以外の医療費(内科診察代、風邪薬、湿布など)。
□受給者証に記載されていない病院・診療所から発行された処方せんを、受給者証に記載されている薬局で調剤した領収書
精神障害者保健福祉手帳と同時に申請
更新の時期が近ければ「自立支援医療制度」は、「精神障害者保健福祉手帳」と同時申請が可能です。自立支援医療費支給制度(精神通院)と精神障害者保健福祉手帳の同時申請にあたって、手帳用の診断書で申請される方は、医療用の診断書の提出は不要です。手帳用の診断書で判定が行われます。
手帳と一緒に申請することで診断書が1枚で済みます。「自立支援医療制度」と「精神障害者保健福祉手帳」を別々に申請すると、2枚分の診断書が必要となります。しかし、同時に申請した場合、手帳用の診断書1枚で申請可能です。手帳は2年に1度の更新、自立支援医療は1年に1度の更新です。
将来的に、更新の時期を揃えられるようなら病院によっては窓口で案内があります。
※但し、精神障害者保健福祉手帳は、初診日から6か月以上経過しないと、申請できません。手帳の更新手続きは有効期間が終了する3カ月前からできます。
自立支援医療(精神通院医療)の診断書の費用
病院で診察を受けた費用に加えて、診断書の作成依頼をした場合は追加での費用が必要となります。医療機関によってはホームページに費用料金を明示している場所もあります。診断書の費用は、各医療機関が独自に設定しており、その金額は医療機関や診断書の内容によって異なるため、注意が必要です。また、自立支援医療の診断書は、医療機関によって書式や記載する情報に違いがある場合があり、費用が変動する可能性があります。また、診断書の発行は医療保険の適用外であるため、全額自己負担となります。
自治体によっては、自立支援医療(精神通院医療)の診断書費用について、以下のような方が補助の対象となる場合があります。ただし、これは一般的な傾向です。広島市の場合、生活保護受給者に対する一部補助はありますが、それ以外の補助については今のところありません。
具体的な対象者や補助の金額、条件は自治体によって異なりますので、必ずお住まいの自治体の担当窓口に確認してください。
- 生活保護受給者: 生活保護を受給している方が自立支援医療の申請に必要な診断書の費用を補助、または生活保護費から支給する制度があります。これは、生活保護の他法優先の原則に基づき、自立支援医療制度の利用を促進するためです。
- 住民税非課税世帯: 所得が低い住民税非課税世帯の方に対して、診断書費用の一部または全額を補助する自治体があります。経済的な負担を軽減し、必要な医療を受けやすくすることが目的です。
- 低所得者: 住民税非課税世帯に準ずる低所得の方も、補助の対象となる場合があります。所得の基準は自治体によって異なります。
- 特定の疾病や状態の方: 精神疾患の種類や重症度、または「重度かつ継続」に該当する方など、特定の条件に該当する方に補助を行う自治体もあります。
- 未成年者やその保護者: 未成年者の自立支援医療申請において、保護者の経済状況に応じて診断書費用を補助する場合があります。
〇カ月以上通院していないと申請できないの?
自立支援医療(精神通院医療)の申請は、「〇カ月以上通院していないと申請できない」といった明確な通院期間の規定はありません。重要なのは、精神疾患により、継続的な通院による精神療法や薬物療法の治療を受けている状態であるかどうかです。継続的な治療の必要性があると医師が判断し、必要な書類が準備でき次第、通院期間の長短に関わらず申請を検討できます。 申請の可否は、主治医の診断と自治体の審査によって最終的に決定されます。継続的な治療が必要と判断されれば、比較的早い段階で申請を検討できます。ご自身の状況について、まずは主治医やお住まいの自治体の障害福祉課にご相談ください。
※障害者手帳の申請には、一般的に初診日から6ヶ月以上の期間が必要ですが、自立支援医療(精神通院医療)にはこの規定はありません。
申請時期によって有効期間は変わりますか?
同じ月内に申請が受理された場合は、有効期間の長さに大きな差はありません。重要なのは、申請が受理された日がどの月かということです。
□月の初めに受理される → 翌月の末日が1年後の月末日となるため、ほぼ1年間の有効期間を得られる。
□月の終わりに受理される → 同じ月の末日が1年後の月末日となるため、有効期間が1年よりも短くなることがあります。
例えば、6月に申請が受理された場合
- 2025年6月5日に申請書が区保健センターに受理されたとします。
- 有効期限は、受理日から1年以内の最も近い月末日となるため、2026年6月30日となります。
- この場合の有効期間は、約1年と25日(2025年6月5日~2026年6月30日)です。
生活保護でも自立支援を申請するの?
生活保護を受給中の方でも、精神科通院のための自立支援を申請するようにと言われます。生活保護受給者には医療扶助という制度があり、原則として医療費は無料となります。しかし、生活保護には他法優先の原則があるため、他に利用できる制度があれば、そちらを優先しなければなりません。したがって、自立支援医療の申請も必要となるのです。
広島市の場合、生活保護を受給されている方が自立支援医療(精神通院医療)の診断書を作成する際の費用について、一部助成する制度を設けています。助成の上限を超える場合、それ以降の金額に関しては実費負担となります。手続きとしては、まずケースワーカーに自立支援医療の申請を希望する旨を伝え、診断書が必要であることを相談してください。ケースワーカーから、診断書費用の支払いに関する指示や手続きについて説明があります。ただし、自治体によっては、生活保護受給者の自立支援医療申請に必要な診断書の費用を全額助成する制度を設けている場合があります。
※自治体よっては実費負担の場合もあります。
自立支援医療制度を使っていることを周りの人に知られる?
自立支援医療制度を使うことで、「周りや会社に知られてしまうのでは」と心配される方もいるかもしれません。しかし、基本的には自分から伝えない限り、勤務先など他者に自立支援医療制度の利用が伝わることはありません。支援を受けていることは病院・薬局のスタッフや市と健保組合の担当者以外に知られることはありません。