視覚過敏とは
視覚過敏とは感覚過敏の一つで、目から入ってくる光や色、動きなどの刺激に過剰に反応してしまい、不快感や痛みや不安感を覚える状態を指します。
視覚に限らず、感覚に対する過敏な状態は、聴覚、触覚、味覚、嗅覚、前庭感覚などあらゆる感覚にも起こり得ます。これらの過敏な反応は病名ではないため医学的な診断名ではなく、感覚が過度に敏感になっている状態、障害や疾患の症状として表現されます。反対に、感覚が鈍くなって不便さを感じる場合は「感覚鈍麻」と呼ばれます。
1980年代にカリフォルニアの学校心理士ヘレン・アーレンが明らかにした、「光の感受性障害」、「アーレンシンドローム」という症候群が視覚過敏と関連している場合もあります。これは特定の波長の光に対する感受性が高すぎることで、文字が歪んで見えたり、眩しさを強く感じたりする状態です。
日常生活においては、「目からの情報」がとても多いので、視覚過敏のある人はさまざまな困りを抱えていると考えられますが、原因やメカニズムがはっきり分かっておらず、有効な治療はまだ確立されていません。感覚の偏りは生まれつきのものであり、努力や気持ち、慣れで克服できるものではありません。
視覚過敏があることで学校生活や仕事に影響がある場合、合理的配慮としての助言を診断書として出してもらうことが可能です。
視覚過敏は発達障害の人に現れる感覚過敏の症状の1つであると言われています。ただし、全ての方に症状があるわけではなく、症状が無い方も中にはいらっしゃいます。また、人によって、症状の現れ方に個人差があります。
私の場合は幼い頃から過敏な状態で景色を見ていたため、この状態が普通だと思っていました。子どもにとっては「自分の感覚」が常に標準です。視覚は感覚の問題であり、人と比べることができないため、当時の私は気づくことができませんでした。視覚過敏を自覚していない人もいます。人によっては違和感を伝えても「気のせいだよと」言われ、そのまま過ごされてしまう方もいらっしゃいます。また、視覚過敏による困難が生じても、「我慢が足りないからだ」と考え、自分を責めてしまうことも少なくありません。私が気づいたきっかけは発達障害と診断されて、その特性として視覚過敏があると分かり、そこから逆算して一般的な人と比べて視覚が過敏なのだと気づきましました。
ほとんどの脳は、世界から情報を受け取り、それを処理し、反応する能力を持っています。しかし、一部の脳では、感覚情報を受け取り、整理して適切に応答することが難しい場合があります。感覚過負荷(脳が処理できる以上の情報を感覚が取り込むときに引き起こされる爆発的な現象)は、誰にでも降りかかる可能性があります。しかし、視覚過敏を持つ人々にとって、感度が高まると、感覚情報が雪崩のように押し寄せ、過剰刺激の可能性が高くなる可能性があります。一般的な人がほとんどの見たり、感じたりしない光や色、情報に悩まされます。視覚的な情報や経験は、肉体的にも感情的にも耐え難く、非常に気が散り、攻撃や痛み、不快感を感じます。
発達障害における視覚過敏の特徴
光や明るさ色に対する過敏反応
・太陽の光や蛍光灯、カメラのフラッシュ光がまぶしすぎて目を開けていられない、正面を見ることが難しい
太陽の光がまぶしすぎて不快になったり、目が開けられなかったりすることがあります。また、部屋の中の蛍光灯がチカチカして不快に感じる人もいらっしゃいます。カメラのフラッシュ光(ストロボライト)が視界に入ることが不快で苦痛で私が子供の頃の写真のほとんどは、目を細め、顔をゆがめ、目をつぶっているものが写っています。近年は以前に比べて、暖色の蛍光灯ではなく、白色 LED 照明が使用される場所が増えており、目の奥に刺さるような感覚で外出の際に私は非常に困るようになりました。蛍光灯が苦手で、席の配置を窓際に変えてもらったこともあります。色付きの光をカットするレンズを買ったところ日中の外出が楽になりました。夜間、運転する場合のみ、車のヘッドライトの対策としてサングラスではく遮光眼鏡を使用される方もいらっしゃいます。
・パソコンや携帯の画面が明るすぎると感じてしまう
パソコンやタブレットなどの画面が明るすぎると感じてしまい、学習や仕事に影響が出てしまう場合があります。
・白い紙だとまぶしく感じてしまう
原稿用紙やノートが白い紙の場合、目を開けていられなかったり、注視できなかったりすることがあります。そのため、紙やノートに書いてある文字を読んだり、書き込んだりするのが難しく、さまざまな場面で困りを抱える場合もあるようです。人によっては、文字が歪んで見えることもあれば、重なって見える症状もあります。
発達障害を持つ方の視覚過敏は、本当に多岐にわたる光刺激によって引き起こされる可能性があります。これらの光刺激は、単独で影響を与えるだけでなく、複数組み合わさることで、より強い不快感を引き起こすこともあります。以下に、特に多く報告される特定の光刺激のと性質例をいくつか挙げます。
- 蛍光灯: 視覚過敏の中で最も多く挙げられる原因の一つです。その強い光度、ちらつき(フリッカー現象)、そして青白い光の色が、不快感、目の疲れ、頭痛、集中困難などを引き起こすことがあります。
- 白色 LED 照明: 近年増えている白色 LED 照明も、強い光度や、製品によってはわずかなちらつきを含む場合があり、苦手と感じる方がいます。特に、青色光の成分が多いLEDは、刺激が強く感じられることがあります。
- 太陽光: 特に晴れた日の強い日差しは、直接的なまぶしさだけでなく、地面や建物からの反射光も刺激になることがあります。
- デジタルスクリーンの光: 携帯、パソコン、タブレットなどの画面から発せられる光。特に、明るすぎる画面や、画面のちらつき、ブルーライトなどが原因となることがあります。
- 点滅する光: パソコンの画面のちらつき、イルミネーションの点滅、パトカーの回転灯など、断続的に点滅する光は、強い不快感や吐き気、めまいなどを引き起こすことがあります。
- コントラストの強い光: 白と黒のように、明暗差が激しい場面を見ると、目が疲れやすいことがあります。
- 光の当たり方と環境として以下のものがあります。
直接的な光: 光源から直接目に届く光は、特に刺激が強く感じられます。 - 反射光: 床や壁、水面などで反射した光も、拡散していても刺激になることがあります。
- 光の強さの変化: 急な明るさの変化(例:暗い場所から明るい場所へ移動する)に目が対応しにくいことがあります。
- 光の散乱: 霧や雨の日など、光が空気中の粒子に散乱して拡散した状態も、見えにくさや不快感を引き起こすことがあります。
色の刺激として以下のものがあります。 - 色:特定の色の光: 白色などの光を特に刺激的に感じる方がいます。逆に、暖色系の光は比較的落ち着いて感じられることが多いようです。
- 彩度の高い色: 鮮やかすぎる色も、目に負担を与えることがあります。
目から入る情報量の多さからくる過敏反応
・商業施設や遊園地など、人混みや物の多い場所に行くと頭痛や倦怠感などの身体症状、不快感、嫌悪感などの精神症状が出る
人混みや物の多い場所は、目から入る情報量が多いため、苦手な環境に長くいると(例えば集中困難、倦怠感、目の疲れ、頭痛、吐き気、不快感、嫌悪感など)が現れることがあります。明るさ以外にも目に入る情報量が多いとパニックになることもあります。例えば、物がごちゃごちゃしていて、物が整理されておらず、物が乱雑に散乱しているなど、一度に入ってくる情報が多いと混乱してしまったりします。ただ何度も目を通すことで、刺激に対して多少は慣れることもあります。しかし新しく慣れない場所や環境に出て一度に多くの情報が目に入ってきてしまうと、身体症状や精神症状が出てしまうことがあります。
・集中して目を使うと頭痛や吐き気などの身体症状が出る
長時間のテレビや動画視聴、パソコン作業、読書により、頭痛や吐き気などが起こることがあります。過集中に近い状態になることで、これらの症状が現れると考えられます。」
発達障害の視覚過敏の原因とは
視覚過敏の原因やメカニズムがはっきり分かっておらず、有効な治療は今のところないのが現状です。視覚過敏の原因としては、光に対して過剰に反応することや、脳の過剰な興奮、脳が視覚情報を過剰に処理してしまうなど脳の感覚処理能力に違いや情報処理の歪みがあることが可能性として考えられます。刺激に対する反応の調節に問題があるのではと言われています。
視覚過敏はASD(自閉スペクトラム症)のある方に多い特性ですが、ASDのある方全てに視覚過敏があるわけではありません。同様に、視覚過敏があるからといって必ずしもASDであるとは限りません。
※角膜炎や緑内障、白内障などの目の疾患によって視覚過敏になることがあります。目の疾患が疑われる場合は、眼科を受診してください。
視覚過敏と色の好みの関連性(発達障害のある人の好きな色、苦手な色)
視覚過敏と色の好みは、密接に関連していると考えられます。発達障害のある方の色の好みや感じ方については、いくつかの研究や報告があります。一般的感じるられている傾向としては、
好きな色:
- 落ち着いた色合い: ベージュ、グレー、パステルカラーなどの穏やかで優しい色を好む傾向があると言われています。これらの色は、視覚的な刺激が少なく、安心感や落ち着きを与えると考えられます。
- 単色: 複数の色が混ざった複雑な色合いよりも、シンプルで分かりやすい単色を好む場合があります。
苦手な色:
- 鮮やかすぎる色: 上述の蛍光色や原色に近い高彩度の色など、刺激の強い色を苦手とする傾向があります。これらの色は、視覚的な過負荷を引き起こし、不快感や不安感を増長させる可能性があります。
- コントラストの強い色の組み合わせ: 白と黒のように、明暗差が激しい色の組み合わせも、視覚的なストレスになることがあります。
- 刺激の回避: 視覚過敏のある方は、無意識的に刺激の少ない色を選ぶ傾向があるかもしれません。落ち着いた色合いは、視覚的な負担が少なく、安心感を与えるため、好まれる可能性があります。
- 過剰な反応: 鮮やかな色は、視覚過敏のある方にとって過剰な刺激となり、不快感や疲労感を引き起こすため、避けられる傾向があると考えられます。
発達障害のある方が特定の色のグループを好んだり苦手としたりする背景には、脳の感覚処理の違いが関わっている可能性があります。視覚情報を処理する脳の領域の働き方が、定型発達の方とは異なる場合があり、それが色の感じ方の違いに繋がっているのかもしれません。
しかし、色の好みは非常に個人的なものであり、発達障害の特性だけで完全に説明できるものではありません。個人の経験や文化的な背景なども影響を与えるため、一概に「発達障害の人はこの色が好き(嫌い)」と断定することはできません。
大切なのは、個々の人がどのような色に対して心地よさを感じるか、あるいは不快感を覚えるかを理解し、その人に合った環境を整えることです。ご自身の視覚過敏の経験から、どのような色が負担になるのか、どのような色が落ち着けるのかを把握し、日常生活に取り入れていくことが大切です。
私の場合は家の中から不快に感じる白色の物を極力取り除くようにしています。家具に関しては心地よいと感じる、茶色、カーテンやカーペットなどは好きな紺色に統一し、色の数ができるだけ少なくなるようにして生活しています。服装に関しても落ち着いた色(紺、茶色、黒、グレー)を主に着用しています。
人によってはこだわりがあり、黒、赤、白、の三色のみの服装で生活されている方もいらっしゃいます。
なぜ蛍光色はこんなにも苦痛を感じるのか
私自身、蛍光色が視界に入ると非常に苦痛を感じます。
蛍光色が視覚過敏のある方に強い苦痛を与える理由は、いくつかの要因が複合的に影響していると考えられています。蛍光色: 蛍光ピンク、蛍光イエロー、蛍光グリーンなど、特に明るく、目がチカチカするような色合いです。
- 強い光度と波長: 蛍光色は、通常の染料よりも可視光線を強く反射するため、非常に明るく感じられます。また、特定の波長の光を強く放出するため、網膜の特定の細胞を過剰に刺激する可能性があります。
- ちらつき: 蛍光灯自体にもわずかなちらつきがありますが、蛍光色の素材は、光の当たり方によって微細なちらつきを生じさせやすい場合があります。このちらつきが、脳に過剰な情報処理を強いると考えられています。
- 脳の過剰な興奮: 視覚過敏のある人の脳は、感覚情報を処理する際に、過剰に興奮しやすい傾向があると言われています。蛍光色の強い光刺激が、この過剰な興奮をさらに増幅させ、不快感や痛みとして感じられる可能性があります。
- 情報処理の歪み: 視覚情報が脳内で処理される過程で、何らかの歪みが生じている可能性も考えられます。蛍光色の持つ特異な光の性質が、その歪みをより顕著にするのかもしれません。
視覚過敏への対策
視覚過敏への対策の基本的な方針は、外部からの刺激を減らすことです。 自分の限界を特定し、過去にあなたを圧倒したこと、やらなくてもいいこと、またはやりたくないことに対しては、避けるようにしましょう。できるだけ、自分の気質に合ったシチュエーションを選んでください。非常に敏感な人は、その日の出来事を処理するために他の人よりも多くの時間を必要とします。無理をする前に、より多くの刺激を処理できるかどうかを考え、ご自身の感性を尊重してください。
- 遮光眼鏡・サングラス・カラーレンズ・帽子の活用
- 照明の工夫(暖色系のライト、間接照明、明るさや色調がコントロールできる照明器具など)
- デジタルデバイスなどの光量の調整
- 文具の工夫(薄い緑色の紙を使ったノート「目にやさしい!カラーノート」や色付きの透明な下敷き「オーバーレイ」読みたい文字に当てて使う読書補助具「リーディングトラッカー」を使用する、蛍光ペンでなぞる)
- 生活環境の調整(整理整頓をする、布をかけて情報量を減らす、部屋を落ち着いた色で統一する、遮光カーテンを使用する)
- 仕切りを使用する
- 日陰で休憩する、夕方や夜間に行動する
- 人混みは極力避ける
- 電車やバスに乗っているときには、目を閉じて休む
- 周りの人に理解を求める(照明から遠い場所や、角や壁ぎわの席など、なるべくまぶしくない座席にしてもらう、光を遮るパーティションやボックスを自分のデスクに置かせてもらう、しんどくなった時の休憩場所やカームダウンスペースを設けてもらう)
視覚過敏と薬の関係について
一般的に、視覚過敏そのものを直接的に改善する薬は、現在のところありません。
視覚過敏は、脳の視覚情報処理の特性や、光に対する過剰な反応が主な原因と考えられています。そのため、治療の中心は、環境調整や視覚補助具の活用になります。具体的には、遮光眼鏡の使用、照明の調整、デジタルデバイスの設定変更などが挙げられます。
ただし、視覚過敏に伴う二次的な症状、例えば、強い光刺激による不安感や頭痛、睡眠障害などに対しては、抗不安薬や鎮痛薬、睡眠導入剤などが用いられることがあります。これらの薬は、視覚過敏そのものを治療するのではなく、関連する症状を緩和し、間接的に生活の質を向上させることを目的としています。
パニック障害と視覚過敏の関連性
視覚過敏の感じ方は、その時の体調、疲労度、ストレスなど、様々な要因によっても変動します。体調が悪かったり、不安が強かったり、予想外の事態が起きた時に症状が強く出る人が多いようです。
私自身、パニック障害に伴い感覚過敏、主に視覚過敏・聴覚過敏が悪化したことがあります。視覚過敏については光過敏が悪化し、外出、テレビ視聴やパソコンの画面を見ることが困難になり、部屋の至る所の電気をすべて消して日々を過ごしていました。
パニック障害は、強い不安や恐怖が突然襲ってくる病気ですが、その症状は精神的なものだけでなく、身体的なものも多岐にわたります。感覚過敏もその一つであり、特に視覚過敏は、パニック発作や予期不安と関連して現れることがあります。
パニック障害時に視覚過敏が悪化する理由としては、以下のようなものが考えられています。
- 自律神経の乱れ: パニック発作は、自律神経の過剰な活動によって引き起こされると考えられています。自律神経は、心拍、呼吸、体温だけでなく、感覚の調節にも関わっています。そのため、パニック発作や強い不安によって自律神経が乱れると、視覚情報に対する過敏性が高まることがあります。
- 過覚醒: パニック障害の状態では、常に「何か悪いことが起こるのではないか」という予期不安を感じやすく、脳が過覚醒状態にあります。この過覚醒状態は、あらゆる感覚刺激を通常よりも強く感じやすくさせ、視覚的な刺激も例外ではありません。
- 光に対する恐怖や回避: 一度、特定の光刺激によってパニック発作が誘発されたり、強い不快感を覚えたりすると、「また同じようなことが起こるのではないか」という恐怖心から、その光を避けようとするようになります。
- 感覚遮断による安心感: 暗い場所にいることや、視覚的な刺激を極力減らすことで、一時的に不安感が軽減されると感じるため、無意識的にそのような環境を求めることがあります。
同様の体験をした人の声
インターネット上の情報交換の場では、パニック障害に伴う視覚過敏に苦しんでいる方の声が数多く見られます。パニック障害と視覚過敏は決して珍しい組み合わせではありません。
- 「発作が起きそうになると、蛍光灯の光がチカチカして耐えられなくなる。」
- 「外出先の強い日差しが恐怖で、サングラスなしではいられない。」
- 「テレビの画面の動きや光が刺激的すぎて、見ていると気分が悪くなる。」
- 「部屋の電気を消して、薄暗い中で過ごすのが一番落ち着く。」
- 「眩しい光を見ると、心臓がドキドキして呼吸が苦しくなる。」
視覚鈍麻の特徴
発達障害を持つ方の視覚鈍麻は、視覚過敏ほど一般的に広く知られていないかもしれませんが、特性の一つです。視覚鈍麻は、視覚的な刺激に対する反応が鈍く、見えにくさや認識の遅れなどを感じやすい状態を指します。また、物の見分けにくさ、奥行きや距離感の把握の困難さ、動きの認識の遅れなどが特徴として挙げられます。これは、目の機能自体に問題がある場合もありますが、脳が視覚情報を処理する過程に遅れや困難さがある場合に起こることが多いと考えられています。
視覚鈍麻の現れ方は人によって様々ですが、以下のような特徴が見られることがあります。
- 物の見分けにくさ: 細かい部分が見えにくい、似たような形や色の物の区別がつきにくい。
- 奥行きや距離感の把握の困難さ: 立体的に見ることが苦手、物の遠近感が掴みにくい。
- 動きの認識の遅れ: 動いている物を目で追いかけるのが苦手、速い動きについていけない。
- 色の認識の曖昧さ: 特定の色が認識しにくい、色の濃淡の区別がつきにくい。
- 光に対する反応の遅れ: 明るい場所から暗い場所へ移動した時や、その逆の時に、目が慣れるのに時間がかかる。
- 情報処理の遅さ: 見たものを理解するのに時間がかかる、視覚的な指示に従うのが遅い。
- 注視の困難さ: 特定の物に焦点を合わせ続けるのが難しい。
- 空間認知の弱さ: 物の位置関係を把握することが苦手。
視覚鈍麻への対策
視覚鈍麻への対策は、個々の症状や困りごとに合わせて行うことが重要です。以下に一般的な対策をいくつかご紹介します。
- 環境調整:
- 適切な照明: 明るすぎず、暗すぎない、均一な明るさの照明を使用する。必要に応じて、手元を照らすライトなどを活用する。
- コントラストの調整: 見たいものと背景色のコントラストをはっきりさせる(例:白い紙に黒い文字、濃い色の食器に白い食べ物)。
- 物の整理整頓: 周囲を整理整頓し、物の配置を分かりやすくすることで、探しやすくする。
- 目印の活用: 重要な物や場所に、分かりやすい色や形の目印をつける。
- 視覚補助具の活用:
- ルーペや拡大鏡: 細かいものを見る際に活用する。
- カラーフィルター: 特定の色のコントラストを高めたり、眩しさを軽減したりする効果がある場合がある。専門家と相談して適切なものを選ぶ。
- 特殊な眼鏡: 視覚情報を補強する特殊なレンズを用いた眼鏡が有効な場合があります。発達障害の専門カウンセラー兼youtuberの吉浜ツトムさんが紹介されています。
視覚過敏があるからといって、必ずしも視覚鈍麻を伴うとは限りません。 しかし、両者が共存する可能性はあります。発達障害を持つ方の中には、感覚過敏と感覚鈍麻の両方の特性を示す方がいます。これは、脳の感覚処理の特性が一様ではないためと考えられています。視覚においても同様のことが起こり得ます。物事によっては強く感じることもあれば、感じにくいこともあるかもしれません。
- 特定の種類の刺激に対して過敏、他の種類の刺激に対して鈍麻: 例えば、蛍光灯の強い光や特定の色のコントラストには非常に敏感だけれど、細かい模様の識別や奥行きを感じ取るのが苦手といったケースです。
- 時間的な変化: ある時は過敏に感じやすく、別の時には鈍麻に感じやすいといった、時間的な変動が見られることがあります。これは、その時の体調、疲労度、ストレスレベルなどが、脳の感覚処理に異なる影響を与えるためと考えられます。
- 脳の異なる領域の機能不均衡: 視覚情報を処理する脳の異なる領域の機能に偏りがある場合、特定の刺激には過剰に反応し、別の刺激には反応が鈍くなる可能性があります。
発達障害と視機能の問題
発達障害を持つ方の中には、視覚情報処理や眼球運動など、視機能に課題を抱えている場合があります。 これは、目そのものの視力というよりも、脳が目からの情報をどのように受け取り、処理し、活用するかに問題があると考えられています。
具体的には、以下のような視機能の課題が見られることがあります。
- 眼球運動の困難さ: スムーズに目を動かせない、一点に焦点を合わせにくい、動くものを目で追いかけにくいなど。
- 両眼視の困難さ: 両目をうまく連携させて立体的に見ることが難しい。
- 視覚情報の処理の遅れや歪み: 見たものを認識するのに時間がかかる、文字が歪んで見える、奥行きが掴みにくいなど。
- 周辺視野の狭さ: 見えている範囲が狭く感じられる。
目の眼球運動の動きと発達障害の関連性について
目の眼球運動の動きと発達障害(ADHDやASD)の特性を示す可能性が示唆されており、研究が進められています。眼球運動は、注意、認知、社会的な情報処理など、様々な脳機能と密接に関連しています。発達障害を持つ人々の中には、これらの脳機能に関連する眼球運動のパターンに、定型発達の人々とは異なる特徴が見られることがあるという報告があります。眼球運動の分析は、発達障害の特性を理解する上で、新たな手がかりを提供する可能性を秘めています。しかし、現時点では、眼球運動の動きだけで発達障害の有無を判断することはできません。今後の研究の進展が期待されています。
ADHDと眼球運動:
ADHDのある人では、以下のような眼球運動の特徴が報告されています。
- 急速な眼球運動:目の速い動きを制御する脳機能に問題があり、意図しない方向への素早い目の動きが多い。
- 一点に視線を合わせることが不安定: 焦点を合わせた対象に目を 維持させることが難しい。注意を持続させることの難しさと関連していると考えられます。焦点を合わせた対象に目を維持させることが難しいため、学習時に集中して教科書や黒板を見ることが困難になったり、読書時に行を読み飛ばしてしまったりすることがあります。
- 滑動性眼球運動(ゆっくりと動く目標を追跡する動き)の困難さ: 動いている物を見て認識したり、自分が動いている時に目標物を見たりすることが苦手な場合があります。
ASDと眼球運動:
ASDのある人では、以下のような眼球運動の特徴が報告されています。
- 社会的刺激への注視の困難さ: 他者の顔、特に相手の目を見ること、目を合わせることを避ける、目の周りを見てもすぐに視線をそらしたりすることがあり、視線の動きが定型発達の人とは異なることがあります。これは、目のアイコンタクトが過剰な刺激となったり、社会的な不安を引き起こしたりするためと考えられています。他者の顔、特に相手の目を見ることを避けるため、相手の表情から感情や意図を読み取ることが難しく、社会的なコミュニケーションにおいて困難が生じることがあります。
- 全体よりも部分に注目: 全体像を把握するよりも、細部や断片的な情報に注意を集中する傾向があります。例えば、人の顔を見るときに、顔全体の表情として捉えるのではなく、鼻の形や髪の毛の色など、個々の部分に注目することがあります。
- ランダムな視線移動: 視線が定まらず、あちこちを不規則に動き回ることがあります。これは、注意の集中が難しかったり、何に注目すべきかが分かりにくかったりするためと考えられます。
- 予測的な眼球運動の困難さ: 動きのある対象の次の位置を予測して目を動かすことが苦手な場合がある。
- 共同注視の困難さ:他の人が見ているものや指さしているものに、視線を向けるのが遅れることがあります。これは、社会的な手がかりを理解しにくいことが影響していると考えられます。
- 特定の視覚的特徴への過剰な注視: 特定の模様や光などに過度な注意を向け、そこから目を離しにくいことがある。
注意点:
- 診断の決め手にはならない: 眼球運動のパターンは、発達障害の診断基準を満たすかどうかを判断する唯一の指標ではありません。行動観察、心理検査、本人や保護者からの聞き取りなど、多角的な評価が不可欠です。
- 個人差が大きい: これらの特徴は発達障害の全ての方に当てはまるわけではありません。発達障害には明確な境界線があるわけではありません。それぞれの特性の現れ方は、人によって濃淡があり、個人差が大きいです。発達障害の特性と同様に、眼球運動のパターンにも個人差が大きいため、特定の特徴が見られないからといって発達障害を否定できるわけではありません。
- 研究段階: 眼球運動と発達障害の関連性の研究は進んでいますが、まだ解明されていない点も多くあります。眼球運動のパターンが、発達障害の直接的な原因なのか、それとも関連する神経基盤の反映なのかなど、さらなる研究が必要です。
- 他の要因の可能性: 眼球運動には、疲労、注意の状態など、様々な要因が影響を与えます。これらの要因を考慮する必要があります。
ビジョントレーニングとは
ビジョントレーニングとは、「見る」機能を高める練習全般の事を言います。簡単に言うと「視覚機能を鍛える訓練」です。単に視力を回復させるのではなく、「見る力」全体を高めます。具体的には、目から入ってくる情報を脳が正しく理解し、それを基に適切に行動するための様々な能力を向上させることを目的としています。ビジョントレーニングでは「目で見て」「脳で理解し」「動作する」プロセスをスムーズに行うことが期待されます。
発達障害のある人は、見る力が弱い場合があります。ADHDやASDの眼球運動の特性が、単なる目の動きの問題ではなく、学習や日常生活における困難さと直接的に関連しています。ビジョントレーニングを行うことで、発達障害を持つ方の学習、運動、日常生活における困難さを軽減する可能性があります。
見る機能が弱い人の特徴
以下のような特徴が報告されています。
- キャッチボールが苦手
- 黒板の字をノートに書き写すのが苦手
- 本を読む時に、行を読み飛ばしてしまう
- 階段や段差で躓きやすい、物にぶつかりやすい
- はしやはさみをうまく使えないなど、手先が不器用
- 探し物が見つけにくい
ビジョントレーニングで鍛えられる「見る」機能とは
ビジョントレーニングでは目を鍛えることで脳の情報処理を円滑にすることができます。ビジョントレーニングで鍛えられる視覚機能には、主に「眼球運動」、「視空間認知」、「目と体の協応」の3種類があります。
- 目で見る(眼球運動・情報の入力): 外界からの情報を目を通して取り入れる力で、ものを目で追う、視線を素早く動かす、両目を寄せたりする力。
- 脳で理解する(視知覚認知・情報処理): 目で捉えた情報を脳で認識、記憶、理解し、脳で処理する力。
- 動作する(目と手の協応・情報の出力): 脳で処理された視覚情報に基づいて、体を適切に動かす力。
ビジョントレーニングは、これらの要素を様々なエクササイズを通して改善していくものです。
具体的なトレーニング内容の例
ビジョントレーニングには、様々な種類のエクササイズがあります。以下に代表的なものをいくつかご紹介します。
- 目で見るトレーニング:
- 動く目標を滑らかに目で追う練習(例:指やボールを目で追う)。
- ある点から別の点へ素早く視線を移動させる練習(例:ランダムに並んだ数字を順番に目で追う、黒板とノートを交互に見る)。
- 近くの物と遠くの物を交互に見ることで、両目の焦点を合わせる力を鍛える練習。
- 脳で理解するトレーニング:
- 空間認識: 図形や物の特徴 を把握する練習(例:積み木、パズル)。
- 奥行き知覚: 物の遠近感や立体感を捉える練習(例:ボールをキャッチする、糸通し)。
- 図と地の分離: 見たい対象と背景を区別する練習(例:隠された絵を探す)。
瞬間視: 一瞬だけ提示された図形や文字を認識する練習。 - 記憶力: 見たものを記憶する練習(例:神経衰弱)。
- 動作するトレーニング:
- 手と目の協応: 見たものに合わせて手を動かす練習(例:お手玉、ボール投げ、紐通し)。
- 全身運動との連携: 目で捉えた情報をもとに、全身をスムーズに動かす練習(例:バランスボール、ケンケンパ)。
ビジョントレーニングの目的と効果
ビジョントレーニングは、以下のような目的で行われ、効果が期待されています。
- 学習能力の向上: 読み書きの困難さの改善、集中力の向上、板書を写すスピードアップなど。
- 運動能力の向上: ボール運動の苦手さの改善、反応速度の向上など。
- 日常生活の質の向上: 物にぶつかりやすい、疲れやすいなどの改善。
- 目の疲れの軽減: 目をスムーズに使うことで、目の筋肉の負担を軽減する。
独学で行うビジョントレーニング
自分のペースで、手軽に始められる: 時間や場所を選ばずに、無理なく取り組めます。専門機関でのトレーニングに比べて費用を抑えられます。
独学で利用できる教材: ビジョントレーニングに関する書籍が多数出版されています。
学習・運動が好きになる 1日5分! 眼と体を楽しく動かす ビジョントレーニング・ワークブック
速読ジム
速読とビジョントレーニングは、目の機能を高め、脳の情報処理を効率化するという点で深く関連しています。速読は、短時間で大量の情報を正確に読み取る技術であり、その習得には高度な「見る力」が必要です。速読トレーニングのプログラムには、眼球運動の訓練や視幅を拡大する訓練など、ビジョントレーニングと共通する要素が多く含まれています。
ビジョントレーニングについて紹介をしておりますが、私自身でビジョントレーニングを長期的に試した経験がなく、その効果や感想を述べることができません。今後、体験などを記載できればと思っています。
注意点:
- ビジョントレーニングの効果には個人差があり、全ての発達障害を持つ方に有効であるとは限りません。また、ビジョントレーニングは誰にでも、どのような目の状態の方にも効果があるわけではありません。トレーニングの効果や反応は個人差が大きいため、一律的な期待を持つのではなく、個々のペースに合わせて進める必要があります。
- ビジョントレーニングは、発達障害に対する包括的な支援の一部として捉えるべきであり、単独で全ての問題を解決するものではありません。
※全体を通して、これはあくまで私個人的な考えや体験であり、視覚過敏に対する症状や感じ方、対処方法は人それぞれ異なります。
参考文献
「本記事を作成するにあたり、Google AI Gemini Proの文章を参考にしています。」
NHK 発達障害って何だろう 困りごとのトリセツ 取り扱い説明書 視覚が過敏「光」「色」がストレス
眼球運動のわずかな異常から発達障害を早期に診断できる手法を開発 子供の発達障害に対する適切なケアの実現へ
ビジョントレーニングの役割 発達障害と視覚機能の関係~有効性やトレーニング方法、効果や訓練の目的など~
発達障害のある人のつらい感覚の問題とそのセルフケア(国立障害者リハビリテーションセンター研究所)
感覚過敏研究所とは