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空気を読みすぎる 「不安型愛着スタイル」 他人の顔色に支配されてしまう人々

ねこ ブログ

空気を読み過ぎる「過剰同調性」とは?

過剰同調性とは空気を読みすぎ、相手に合わせすぎる特性のことです。なお、過剰同調性という言葉は、精神科医の柴山雅俊先生が発案したものであり、正式な病名ではありません。

家族の雰囲気や学校という場での緊張感、雰囲気、空気などを読んで、トラブルにならないように自己犠牲的に周囲に合わせようとします。嫌われないように相手に合わせる。相手が喋っている内容から、その人の考え方を読み取って、それをもとにしてその人が好むようなことを言う。嫌われるのも、怒らせるのも、議論になるのも怖い。相手の考え方を過剰に読み取って、それに合わせていく、空気が読めないKYとはまさに対極にある特性です。

だれも心から信頼できず、養育者・教育者にさえ警戒してしまう時、子供はどんな戦略をとるでしょうか。敵か味方かもわからない見知らぬ人達に囲まれている時、どうやって生き延びるでしょうか。

そうした家庭環境・学校生活に置かれたとき、一部の子どもたちは、だれに頼るでもなく、自分自身でその問題を解決する適応反応を見せます。自分を守ってくれる養育者・教育者を現実に見いだせなかったのであれば、顔色を伺い、相手が敵か味方かを知るために、過剰に空気を読んで先を予測しようとします。常に相手の顔色をうかがって、その場その場で最善の身の置き方を無意識のうちに決定します。基本的な安心感が欠如しているために、常に周りの顔色や感情の変化にアンテナを張り巡らす生き方を、幼児のころからずっと続けており、それが当たり前になっています。

普通の人以上に、空気を読み過ぎるあまり、場面ごとに違う自分、学校や家庭、友だちの前など、それぞれの場に最適な自分を無意識のうちに演じ分けるようになります。そして、空気を読んで、様々な自分を演じ分けることで、自分の身を守るようになります。

幼いころの混乱した無秩序な環境が、他の人を信頼することができず、周りの空気を読むことを強いられて生活させざるを得なかったのです。

基本的な安心感が育まれていないため、他の人と接する際、頼って心を休めたいと感じる反応と、傷つけられることを警戒して身構える反応とが同時に起こります。他の人に一見親しげに振るまって接近しつつも、同時に警戒を緩めることができないという苦痛に満ちた人間関係に発展しがちです。それは、「アクセルとブレーキを両方踏んでいるような状態」です。

他の人の顔色を読む強い感受性を発達させ、優しく気配りしますが、心の底では、相手を信頼することができず、常に緊張しています。

本来なら同居するはずのない、人に対して親しげに振る舞う自分と、人に対して警戒する自分が同時に現れることが日常的に続くと、感情のコントロールも難しくなり、感情の不安定さを抱えることが多くなると言われています。

あなたの行動を支配する愛着スタイル

人の顔色をすごく気にしてしまい、気疲れしやすい。対立したくないので、つい相手に合わせてしまう。対人関係のパターンを知らず知らずのうちに支配しているのが、その人の愛着スタイルだと考えられるようになっています。愛着スタイルはその人の根底で、対人関係だけではなく、感情や認知、行動に幅広く影響していることが分ってきました。愛着障害・愛着スタイル自体は医学的、心理学的に議論は交わされていますが、はっきりとした診断基準はありません。あくまでもパーソナリティーの傾向であり、人それぞれに違いがあります。愛着のパターンは、その人の生き方に染み付いているので、多くの人は疑問さえ抱きません。他の人のちょっとした言葉や行動に敏感に反応し、パニックになったり怒ったり落ち込んだりしてしまうのは、単なる性格ではなく、愛着スタイルによるものが大きいです。

困ったことがあるとすぐに相談する人、逆にどんなに困っていてもなかなか相談できない人。相手とすぐに親しくなる人もいれば、何年顔を合わせていても、いっこうに距離が縮まらない人もいます。こうした行動の違いを生み出しているのが愛着スタイルだと言われています。安定した愛着スタイルの人に比べて不安定な愛着スタイルの人は拒絶されるのではないかと不安になって助けを求めることをためらったり、最初から助けを求めようとはしなかったりします。

愛着と生存戦略

混乱した無秩序な環境に置かれた子供は、特有の方法で周囲をコントロールすることで、保護や関心が不足したり不安定だったりする状況を補うようになります。攻撃や罰を与えることによって周囲を動かそうとするパターンと、良い子にふるまったり、保護者のように親を慰めたり手伝ったりすることで、親をコントロールしようとするパターンがあります。

支配的コントロールは、暴力や心理的優位によって、相手絵を思い通りに動かそうとするものである。

従属的コントロールは、相手の意に従い恭順することで、相手の愛顧を得ようとする戦略である。一見するとコントロールとは正反対に思えるが相手に合わせ、相手の気に入るように振る舞ったり、相手の支えになったりすることで、相手の気分や愛情を意のままにしようとする点でコントロールと言える。

操作的コントロールは、支配的コントロールと従属的コントロールが、より巧妙に組み合わさったもので、相手に強い心理的衝撃を与え、同情や共感や反発を引き起こすことによって相手を思い通りに動かそうとするものである。

いずれのコントロール戦略も、不安定な愛着状態による心理的な不充足感を補うために発達したものである。この三つは、比較的幼いころから継続してみられることが多い一方で、大きく変化する場合もある。また、相手によって戦略を変えてくるということも多い。それによってバランスをとっていると言える。

愛着障害 (P41)

不安愛着スタイルとは?

愛着障害の中でも、比較的軽度な愛着障害である愛着スタイル。他人との関係における態度や行動の傾向を示す心理学の概念です。愛着には4つのパターンがあり、それぞれ「安定型」「不安型」「回避型」「混乱型」と呼ばれています。

不安型愛着スタイルは人の顔色や気持ちに対する敏感さや、傷つきやすさ、安心感・自己肯定感の乏しさなどを特徴とします。男性でも一割五分、女性では二割近くの人が該当すると推測されています。

愛着不安が強い人にとって、相手の自分に対する評価が否定的なものだと感じることは、自分の存在を揺るがすような不安を引き起こします。しかも愛着不安の強い人は、愛着不安を感じる対象の範囲が広く、本当に重要な他者に対して愛着不安を覚えるだけでなく、実際には何の影響力を持たない人に対しても相手の顔色や反応を気にして、相手が気を悪くしないか心配になってしまいます。上司や同僚がいつもより不機嫌だったりすると、自分が何か原因になることをしてしまったのではないかと心配になったりします。自分の気持ちよりも、相手にどう思われるかを優先してしまい、相手の機嫌を損ねないかという不安を感じています。

顔色ばかり気にして、人に過剰に尽くしてしまう傾向と表裏一体といえるのが、自己肯定感の低さです。自己肯定感が低く、自分の気持ちよりも、相手の気持ちや反応を優先してきたため、自分が本当に望んでいることや考えていることが、自分でもわからなくなっていることも少なくありません。また、親や周囲の人に認められようと頑張ってきた人が多いため、何事も必要以上に頑張ってしまう。頑張ってきた、もしくは頑張らされてきたことが多く、完璧主義になりやすく、ほどほどにやることが苦手です。

繊細であり、多くの人には気にならないレベルのことも不快に感じやすく、感覚自体も過敏です。客観的に物事を見ることが苦手で、自分の感情に影響されて悪い点や合わない点にばかり目が向いてしまい、共感や好感よりも、違和感や嫌悪感のスイッチのほうが入りやすいといわれています。

不安型の人にとって一番の関心事は人に受け入れられるかどうか、人に嫌われていないかどうかということにあるため、相手の表情に対して敏感で、読み取る速度は速いものの、不正確であることも多いです。相手によく思われたいという自分の努力に対して、相手も同じくらい気を留めてくれていると期待します。拒絶されたり、見捨てられることに対して、極めて敏感です。少しでも、相手が拒否や否定の素振りをみせたりすると、激しい不安にとらわれ、それに対して過剰に反応をしてしまいます。時には自分を批判したり、責めたりして自己嫌悪に陥りやすい側面もあります。

しかし、顔色に敏感で、相手の反応を過剰なまでに気にする不安型の特性はマイナスな点ばかりではありません。繊細で、共感性に優れ、献身的な一面もあり、相手の気持ちを素早く読み取り、機嫌を損なわないようにするためにどうすればよいかという気配りの能力を培っており、よく気がついて、細やかな配慮ができます。相手を快くもてなすことで、信頼や親しみを生み出すことができます。そうした特性を生かして活躍している人も多く存在します。また、不安型の人は、人に相談して、助けを得ようとする傾向が強いため、信頼できる人に頼ればチャンスをつかむことができます。

不安愛着スタイルと発達障害

ASDの傾向が軽度で、社会的スキルや共感能力もそこそこ低くなく、友だち関係もどうにか維持できていたり、親にもある面では可愛がられたという場合、不安型とASD傾向の同居ということが起きる。ASDにともなう神経レベルの過敏さと、不安型愛着スタイルの心理社会的レベルの過敏さが同居するため、とても過敏な傾向が強まり、社会適応を苦労の多いものとする。

不安型愛着スタイル (p119)

私は愛着トラウマや発達障害の影響から、幼少期の頃から、周りとトラブルになるのが怖く、周りの顔色を気にして、自分を押し殺し、良い人を演じてきました。ADHDの特性から忘れ物が多く、特に小学生の頃は教科書、筆箱、給食着等、毎日何かを忘れていました。忘れ物をしないようにと前日にしっかりと玄関に準備しても忘れてしまいます。忘れ物をすると先生に注意をされ、隣の席の人に借りろと言われていました。怒られるのが怖く、教科書がないのに黙って授業を受けたこともあります。忘れものをしていたため、よく先生から怒られていました。よく怒られた経験をしたためか、小さな忘れ物でも恐れて、また怒られるのではないかとビクビクしていました。

私は学校生活で適応していくために、無意識に従属的戦略(良い人戦略)をとるようになっていました。ADHDの特性上、忘れ物をなくすことは難しい、いかに先生に怒られにくい人になるか、周りからいかに借りるか、いかに借りやすい状況を作るかという方向にシフトしていきました。正直、苦手な人にあまり物を貸したくないですよね。一番物を借りる確率の高い、隣人といかにうまく過ごすか、相手に合わせ、相手の気に入るように振る舞ったり、嫌われないように細心の注意を払っていました。怒られる場合でもこいつならしかたないかという人を目指しました。

理不尽なことを言われても、おかしいことや嫌なことも我慢するしかなく、自分の正直な気持ちを押し殺していました。隣人の要求に従わないとケンカになったり、無視されたりする場合には、隣人にとっての良い奴でいるしかありません。相手の考え方を過剰に読み取って、それに合わせて、顔色を伺い、正解を探します。一番の関心事は人に受け入れられるかどうか、人に嫌われていないかどうかということになっていきました。

何が一番大変かというと席替え・クラス替えです。せっかく仲良くなってもまた一からのスタートです。少人数と仲良くすればよいわけではなく、大多数の人と仲良くなる必要がありました。

不注意特性という爆弾を抱えているために、常に危険に備えなければなりません。最悪の事態が起きないように、先読みして、周りに気を配り、気を抜くことができません。周りに良く思われることが最大の自分を守る防衛になっており、集団場面では、周りの雰囲気が悪くならないように気を使います。周りの人とうまくやろうとして、良い人を演じているために、慕われたりすることもありますが、そこから抜け出せません。

つまり、脳の個性に基づく発達障害による生きづらさを、その人なりに凌いでく生き方の蓄積が、10歳以降はその人のパーソナリティを形成します。そこに無理があるならば、しばしばパーソナリティは不安定になります。思春期以降は、さらに、精神疾患が重畳することもしばしばあります。慢性の軽度のうつ病や、パニック障害、場合によっては一過性の精神病も生じることもあります。

 つまり、大人の発達障害を診る場合、発達障害の部分だけを見ていても、極めて不十分ということです。健康な側面、パーソナリティの特性、二次的な精神疾患の有無なども含めた立体的な見立てが重要になります。

浅田心療クリニック 院長ブログ 大人の発達障害について

幼少期に、人の顔色を伺って、良い人を演じてきた経験から、社会に出ても、愛想をよくして、人の顔色を伺っていくようになります。現実の自分ではなく、理想的な自分になって、人に好かれないといけない、人に嫌われてはいけないと思って、他人に自分の存在を承認されることで、自己の肯定感を得ようとします。

小さい頃は、良い人でいることが自分の身を最大限に守る方法でしたが、大人になればなるほど生きづらくなり、自分を苦しめていきました。理想的な自分になろうとすればするほど、本来の自分とのギャップに苦しみ、落ち込みます。良い人でいることが重荷になり、リスクになり、体が悲鳴を上げていました。大人になっていくにつれて、本当の自分を見失って苦しむことになりました。いつも愛想を振りまくことで、苦難を乗り切ろうとしていました。いつか耐えれなくなり、心身が限界に達します。膨らんだ心の借金は、いずれ返済を求められます。ADHDと愛着障害は、類似しているだけでなくて、遺伝的なADHD要素と、後天的な愛着の障害とが重なって、より症状が増幅されている人も少なくないようです。

不安型愛着スタイルの克服

回復のために必要なのは、原因が何かよりも、その人が過酷な状況の中、どうやって生き延びてきたのか、そのためには、人の顔色ばかり気にして、相手に迎合するという行動パターンも必要であり、そうなったのは、至極もっともなことで、むしろよくやってきたのだという視点である。

不安型愛着スタイル (P251)
  1. 不安型愛着スタイルに気づく:不調や違和感、空虚感、生きづらさの感覚といったものは、現在の生き方や心のバランスのとり方が限界を迎え、維持しきれなくなっていることを教えてくれています。
  2. 距離を取り安全を確保する:物理的にも心理的にも距離を確保し、相手がこちらの領域に踏み込んできたり、感情的な揺さぶりをかけてきたりする機会をできるだけ防いでいきましょう。
  3. 相手にとって良い子やめる:自分の本意ではないと感じたのなら、はっきりと意思表示をし、拒否することが、自分を取り戻すために必要なステップです。嫌なことは我慢せずはっきり「ノー」と言いましょう。
  4. 安全基地を手に入れる: 安定した人間関係は、不安型の克服において重要なことです。信頼できる人との深い関係を築くことで、それが安全基地になって、安心感や支えを感じることができます。
  5. 第三者に話して、整理する: 自分の感情を理解し、適切に表現することが不安型の克服に役立ちます。自分の感情を吐き出して、他者と共有することで、心の傷が癒やされていきます。客観的に状態や状況を記録し自分のペースで気持ちや考えを整理していくことが大切です。
  6. 本来の自分の強みや価値に気づく: 自己評価が低い傾向がある場合、自己肯定感を向上させることが重要です。自分の強みや優れた点を認識することで、自分の認識の枠を広げることにつながります。
  7. 集団療法:集団療法に参加することで、他者と対等な関係の築き方を学び、サポートを受けることができます。グループ内での対人関係の練習や情緒の共有が行われることで、社会的なスキルや感情の調整能力を向上させることが期待されます。
  8. マインドフルネス: マインドフルネスやリラクゼーションの実践は、感情の安定化やストレスの軽減に大きな効果があります。ただリラックスしたり、家事をしたり、花に水をやったりとぼんやりする時間を持つだけでも効果があります。
  9. カウンセリングや心理療法:対人関係の困難や感情の不安定さに取り組むために、個別のカウンセリングや心理療法が有効な場合があります。例えば、認知行動療法やスキーマ療法などが使用され、振り返りの作業を通して幼いころからの生き方を見つめ直し、自己評価の歪みを改善し、自分の生き方のスタイルを少しずつ変えていくことが大切です。
  10. 薬物療法:うつ症状や不安症状がある場合、抗うつ薬や抗不安薬の処方が検討されることがあります。これにより、感情の安定化やうつ症状の緩和が期待されます。