免責事項(読者の皆様へ:自己探求の前に必ずお読みください)
この記事で扱うスキーマ療法は、幼少期のトラウマや感情などの心の最も深い部分に触れるため、精神的な負担を伴う可能性がありますので、精神的に不安定な方は閲覧をお控えください。本記事を読み進める中で、心が揺れ動いたり、辛いと感じられた場合は、無理をなさらず、いつでも読まれることをやめてください。
※この記事で紹介する心理療法は自己実践する際は、細心の注意が必要です。特に過去の強烈なトラウマや、精神的な不安定さを抱えている方、解離症状を伴う場合は、自己判断で実践することは「再トラウマ化」 を引き起こし、心の状態を深刻に悪化させる危険を伴います。
再トラウマ化とは、過去のつらい記憶に不用意に触れることで、当時の激しい感情や身体感覚が再び蘇り、症状を悪化させてしまうことです。 したがって、必ず、信頼できる専門家(臨床心理士や精神科医など)に相談することを強く推奨します。
この記事は、特定の疾患の診断や治療法を提供・指導するものではありません。また、医療行為や自己治療を推奨するものではありません。筆者は医師、公認心理師等の医療資格を有していません。あくまで、生きづらさの根本的な理解を深めるための情報提供を目的としています。あくまで筆者の個人的な解釈と経験を共有するものであり、専門的な治療プロセスを網羅しているわけではありません。
心理的な問題や心身の不調でお困りの場合は、必ず専門家(医師、公認心理師、臨床心理士など)にご相談ください。記事内容を参考に自己判断で対処を行うことは、症状の悪化や新たな不調を招くリスクがあります。
本記事は2万3千字を超える長文です。心を整えて、休憩を挟みながら、ご自身のペースでゆっくりとお読みください。
「なぜ、こんなにも生きづらいのだろう?」
誰もが一度は抱く、この問い。この記事が、あなたの心の奥にある「なぜ?」という疑問に気づいて、スキーマという概念を通して、自分自身の道を見つけるきっかけとなること、それが、私がこの記事に込めた最大の願いです。
スキーマという痛みやリスクを伴うかもしれない概念を知ること、生きづらさの理由をわからず、日々を過ごすことあなたはどちらを選びますか?
私は前者でした。理由がわかっているならまだ生きづらさを受け入れられます。理由がわからないことほど苦しいことはありませんでした。
スキーマ療法は、あなたを救う唯一の道ではありません。それぞれの生きづらさには、それぞれの道があります。この記事を読んだことで、心の仕組みに気づき、日々の行動を少し変えるヒントが得られたなら、それ以上のことはありません。重い精神的な負担を伴う本格的な治療を、全ての方が選ぶ必要はないと私は思っています。自分の「心の地図」を見つける道に、必ずしもスキーマ療法という手段が必要ではないからです。
ただ、ヒントを超えて、この深い心の傷と向き合う必要があると感じた時のために、この情報がお役に立てたなら、筆者として嬉しいことはありません。
スキーマとは?
心の地図
スキーマとは、「構造」を意味する英語です。心理学の世界でのスキーマとは、過去の経験から形成された信念・価値観・思考のパターンであり、私たちが経験を解釈し、世界をどのように見るかを表すフレームワーク(枠組み)として機能します。フレームワーク(枠組み)は「たい焼きの鋳型」のようなものです。簡単に例えるとスキーマは、私たちが経験を解釈し、周囲の世界を理解するのに役立つ「心の地図」だと考えてください。
私たちは、日常生活で膨大な量の情報に直面しています。もし、私たちがすべての情報を一から分析し、判断しなければならないとしたら、脳はすぐに疲れてしまいます。
そこで役立つのが、スキーマという「心の地図」です。 この「心の地図」は、過去の経験から作られた、特定の状況や人物に対する自動的な見方や反応パターンです。一度地図ができあがれば、私たちは新しい場所に辿り着いたとき、いちいち道を尋ねる必要がなくなり、地図を頼りに進むことができます。
あなたが初めて訪れる病院に入ったとします。
- もし「心の地図」がなければ、あなたは「受付での手続きはどうしたらいいんだろう?」「この椅子に座っていいのかな?」「診察の後はどうすればいい?」など、一つひとつの行動に疑問を持ち、考えなければなりません。
- しかし、多くの人は「病院」に関するスキーマを持っています。この地図には「受付で問診表を書いて、健康保険証を出す」「席は空いているところに座る」「診察の後に会計をする」といった情報がすでに書き込まれています。
この地図のおかげで、私たちは細かく考えなくても、自然に適切な行動をとることができます。
私たちは、誰しもが無意識的にこれらの「心の地図」(スキーマ)に基づいて物事を判断し行動し、自分自身や他人との関係を形成します。
(スキーマは幼い頃から開発されますが、成人になってから形成されることもあります。)
スキーマは本来、心の健康にとって非常に重要です。適応的なスキーマは、健全な人間関係や自己認識を築くことを手助けしてくれます。しかし、時にはこれらのスキーマが適切でなく、個人の問題や苦悩の原因となってしまうことがあります。この地図が不正確だったり、古かったりすると、問題が起こります。例えば、「心の地図」に「すべての人は自分を傷つける」と書かれていれば、親切な人に対しても自動的に疑ってしまい、人間関係を築くのが難しくなります。
幼少期の経験は、スキーマ形成の土台となり、親や養育者との関係性や、置かれている状況や環境、経験、生まれ持った体質、育った文化や社会の価値観などが、スキーマの形成に影響を与えると考えられています。
スキーマが不適応な場合、問題行動や感情的苦痛につながる可能性があります。
「例えば、『自分は愛される価値がない(欠陥・恥のスキーマ)』というスキーマを持つ人は、親切にされても『どうせ嘘だ』と受け止めたり、親密な関係を築くことを避けてしまうかもしれません。」過度な不安、慢性的な孤独感などもあります。
スキーマ療法は、幼少期に形成された「不正確な心の地図」を、より健康的で現実的なものに書き換えていくプロセスです。スキーマ療法の主な目的は、個人の不適応的スキーマを認識し、修正することによって、健全な自己概念や認知・行動パターンを構築することです。
なぜスキーマが問題なのか?
スキーマ療法の対象となる「生きづらさ」の原因ともなっている「心の癖」、それは「不適応的スキーマ」と呼ばれます。不適応スキーマは、家族や身近な環境との関わりによって形作られ、幼少期に形成され始める不適応な認知パターンです。これらのスキーマは、次のような経験に反応して発達することがよくあります。
・傷つけられたり、悲劇を感じたり、、恐れを感じたり、絶え間ない批判を受けたり、無視されたり、見捨てられるかもしれないという強い不安を感じたり、安全を感じられなかったり
こうした幼少期の経験に否定的な側面があると、不適応スキーマが発達しそれが深く根付いた信念となり、成人になっても思考や行動、感情の調節に深く影響を及ぼし、心理的症状や不健全な対人関係につながる能性があり、健全な関係を築くのが困難になります。
不適応スキーマの発達は、満たされていない中核的感情欲求(心の欲求)や幼少期の不利な経験と密接に関係しています。たとえば、無視や虐待を受けた子供は、「不信・虐待スキーマ」や「見捨てられスキーマ」を発達させ、これらの感情を大人になっても持ち続ける可能性があります。
意図的ではないにせよ、親が感情的に無関心だったり、必要な関わりが不足したりすると、子どもは「自分は愛される価値がない」と感じ、自己肯定感が育ちにくくなります。親の養育、またはその欠如は、不適応スキーマの発達に大きく影響します。
無意識のネグレクトや明白な虐待まで、親の養育の質は子供の感情の発達に大きく影響します。スキーマの正体を探るためには自分の幼少期の経験を見ていくことになります。不適応的スキーマは私たちの子供時代に形成されたり、生まれ持った特徴や、思春期や大人になってからのトラウマ体験からも影響を受け形成されていきます。
スキーマの根本原因:満たされない「中核的感情欲求」
心の欲求
中核的感情は、私たちが生まれつき持っているとされる、基本的な感情のことです。この欲求が満たされないと、心の不安定さや生きづらさの原因になります。ジェフリー・ヤング博士は中核的感情欲求(心の欲求)の5つを挙げています。
これらの欲求は、子どもの健全な心の土台となるものです。これらの欲求が満たされることで、子どもは自己肯定感や安定した心の状態を築くことができます。しかし、幼少期の欲求が満たされないと、その子どもは成長する過程で、満たされなかった心の穴を埋めるために様々な「不適応なスキーマ」を形成し、それが大人になってからの人間関係や感情の問題を引き起こします。
トラウマ体験が深いか、回数が多いかだけでなく、「そのトラウマが子どものどの感情欲求を阻害したか」と「子どもの生得的特性がその体験をどう受け止めたか」が、スキーマ形成の鍵となります。
スキーマ療法では、子どもである私たちには皆、特定の基本的な感情的欲求があることを教えてくれます。これには、安全、自己同一性、自律性、自分を表現する自由、遊ぶ能力、年齢相応の制限や境界などがあります。
スキーマ療法では、こうした幼少期の満たされなかった感情欲求に焦点を当て、その傷を癒すことで、根本的な「生きづらさ」の解消を目指します。
幼少期に中核的感情的欲求(心の欲求)が満たされなかったことは、スキーマの発達における主な要因です。これらの中核的感情的欲求(心の欲求)は次のとおりです。
この記事では、より直感的に理解しやすいよう、ジェフリー・ヤング博士が提唱した中核的感情欲求の正式名称を変更しています。変更前の正式な名称については、『』併記しています。
5つの中核的感情欲求
- 安全な愛着と安心感/『断絶と拒絶』
- 欲求の内容: 他者(特に養育者)との間に、安全で安定した、そして愛情に満ちた関係を築きたいという欲求。(愛してもらいたい。守ってもらいたい。理解してもらいたい。)
- 原因:幼少期に養育者との間に、安全で安定し、愛情に満ちた関係を築けなかった経験から生じます。
- 満たされない場合: 「見捨てられスキーマ」や「不信・虐待スキーマ」といったスキーマが形成され、対人関係で常に不安を感じたり、他人を信じられなくなったりします。
- 自立性、有能性、自己同一性の感覚/『自律性と遂行の障害』
- 欲求の内容: 自分で物事をこなし、有能であると感じ、自分自身の個性や存在を確立したいという欲求。(有能な人間になりたい。いろんなことがうまくできるようになりたい。)
- 原因:自分で物事をこなし、有能であると感じ、自分自身の個性を確立したいという欲求が満たされなかった場合に形成されます。
- 満たされない場合: 「失敗スキーマ」や「無能・依存スキーマ」といったスキーマが形成され、自分には何もできないと感じたり、常に他者の助けを必要とするようになります。
- 表現の自由と必要なものを他人に求める能力 /『他者指向性』
- 欲求の内容: 自分の感情や考えを自由に、安心して表現したいという欲求。(自分の感情や思いを自由に表現したい。自分の意思を大切にしたい。)
- 原因:自分の感情や考えを自由に、安心して表現したいという欲求が阻害された結果として生じます。
- 満たされない場合:「服従スキーマ」や「自己犠牲スキーマ」といったスキーマが形成され、自分の本当の気持ちを抑え込んだり、他人の意見に逆らえなくなったりします。
- 自発的で自由に遊べる能力/『過度の警戒と抑制』/『限界の障害』
- 欲求の内容: 自分の内側から湧き出る好奇心や衝動に従い、心から遊びや創造性を楽しみたいという欲求です。(自由にのびのび生きたい。楽しく遊びたい。)
- 原因:自分の内側から湧き出る好奇心や衝動に従い、心から楽しみたいという欲求が満たされなかった場合に形成されます。
- 満たされない場合:「感情抑制スキーマ」や「否定・悲観スキーマ」といったスキーマが形成され、楽しむことや自発的な行動に罪悪感を覚えるようになり、心にブレーキがかかります。
- 適切な境界線と自己制御
- 欲求の内容: 社会のルールや他者との境界線を理解し、自己をコントロールできるようになりたいという欲求。(自立性のある人間になりたい。ある程度自分をコントロールできるようになりたい。)
- 原因:社会的なルールや他者との境界線を理解し、自己をコントロールできるようになりたいという欲求が、養育者との関わりの中で適切に学べなかった場合に生じます。
- 満たされない場合: 養育者が過保護すぎたり、逆に無関心であったりすると、現実的な制約を学べず、「コントロール不能スキーマ」や「俺様・女王様スキーマ」といったスキーマが形成される可能性があります。
5つの領域に広がる不適応的スキーマのパターン
ジェフリー・ヤング博士は、子どもが健全に育つために必要な5つの「中核的感情欲求」があるとしています。私たちが幼少期に持つ5つの根本的な感情欲求が満たされなかった結果それぞれ不適応なスキーマが現れるとされます。
5 つのスキーマ領域は、18 の不適応スキーマを分類するためのフレームワークを提供します。各スキーマは、幼少期に満たされなかったニーズから発達した中核的な感情テーマを表しています。これらの領域は感情的苦痛の原因となる特定の思考パターンと行動パターンを特定し、対処するのに役立ちます。
- 感情欲求①愛してもらいたい
- 感情欲求②有能な人間になりたい
- 感情欲求③感情や思いを自由に表現したい
- 感情欲求④自由にのびのび生きたい
- 感情欲求⑤自律のできる人間になりたい
そして、それらの欲求が満たされないと、それぞれ次の5つの領域に対応して不適応的スキーマが形成されます。また、スキーマという思考の枠組み(概念)を無理に否定せず、その存在を認識することで影響力をより弱めることができます。
- 第一領域:「安全な愛着と安心感」スキーマ
- 第二領域:「自律性、有能性、自己同一性の感覚」スキーマ
- 第三領域:「表現の自由」スキーマ
- 第四領域:「自発的で自由に遊べる能力」スキーマ
- 第五領域:「適切な境界線と自己制御」スキーマ
さらに、これら5つの領域の中にはさらに細かいスキーマが存在しています。
「愛してもらいたい」という欲求が満たされずに生じる第一領域「安全な愛着と安心感」スキーマの中には、
- 人はみんな私を見捨てる「見捨てられスキーマ」
- 人は私を攻撃し、虐待してくる「不信・虐待スキーマ」
- 人は私を愛してくれない「愛してもらえないスキーマ」
- 私は人として欠陥がある「欠陥・恥スキーマ」
- 私はいつもひとりだ「孤立スキーマ」
「有能な人間になりたい」という欲求が満たされずに生じる第二領域「自律性、有能性、自己同一性の感覚」スキーマの中には、
- 私は一人では何もできない「無能・依存スキーマ」
- 私は弱い存在ですぐやられる「私は弱者だスキーマ」
- 誰かに同調できないと安心できない「巻き込まれスキーマ」
- 私は何をやっても失敗する「失敗スキーマ」
「感情や思いを自由に表現したい」という欲求が満たされずに生じる第三領域「表現の自由」スキーマの中には、
- 嫌われたくない、怒られたくない「服従スキーマ」
- 自分よりも他者を優先するべき「自己犠牲スキーマ」
- 私の価値は他者の評価によって決まる「評価されたいスキーマ」
「自由にのびのび生きたい」という欲求が満たされずに生じる第四領域の「自発的で自由に遊べる能力」スキーマの中には、
- どうせいいことなんてない「否定・悲観スキーマ」
- 感情を外に出さない方がよい「感情抑制スキーマ」
- 完璧にしないといけない「完璧主義スキーマ」
- 失敗したら罰を受ける「罰スキーマ」
「自律のできる人間になりたい」という欲求が満たされずに生じる第五領域の「適切な境界線と自己制御」スキーマの中には、
- 私は特別な存在だ「俺様・女王様スキーマ」
- 我慢なんてしないで自分の好き勝手やりたい「コントロール不能スキーマ」
以上が、スキーマ療法で扱われる不適応的スキーマの18パターンです。
※この先は、さらに深い部分に触れていきます。心の準備ができていない場合は、一旦記事を閉じて、後日改めて読んでみてください。
不適応スキーマの形成
幼少期の経験が心の地図を歪める
不適応的スキーマは、上記のような欲求不満と、幼少期の具体的な経験が結びつくことで深く根付きます。
例えば、養育者に問題があり、幼少期の虐待やネグレクト、継続的な批判や無視といった否定的な経験した場合、「自分には愛される価値がない(欠陥・恥スキーマ)」「誰も信じられない(不信・虐待スキーマ)」という過酷な環境を生き延びるために身に付いたスキーマが形成されることがあります。
この深い自己否定感は大人になっても持ち続けられ、たとえ、いいことが起こっても、心から受け入れることができません。また、過度に保護されたり、逆に無関心な環境で育った場合も、適切な自己制御を学べず、別のスキーマに繋がります。
そして、不安定な環境で育ち、親の期待に応えなければ愛されないと経験した人は、「良い子でいなければならない」「ありのままの自分では愛されない」という評価や期待に応えようとするスキーマを抱えがちです。論理的には「自分の人生は自分で決めていい」とわかっていても、いざ意見を主張しようとすると、「誰かに嫌われるのでは」「見捨てられるのでは」という根源的な恐怖が湧き上がり、行動を阻んでしまいます。
これは、「愛される自分」という新しい現実が、既存の「愛されない自分」というスキーマと矛盾するため、無意識に自己のスキーマを強化するような行動をとってしまうからです
さらに、「左利きである」や「過敏である」、「障害がある」といった生まれ持った生得的特徴は、特定の養育環境や社会の中で、これらの感情的な欲求が満たされることを妨ぎ、スキーマ形成に影響を与えることがあります。
左利きで手先が不器用だった私は、社会的な理由から利き手を矯正されました。それは単なる習慣の修正ではなく、「自分はなんて不器用なんだろう」という信念を内面化させ、私の自己価値を根本から揺るがす出来事となりました。
過敏である子供が、感情的な反応を批判されたり、無視されたりする環境で育つと、自己の価値や安全な愛着の欲求が満たされないと感じるようになります。そして、「感情を出すと傷つけられる」という信念を抱き、「感情抑制スキーマ」へと繋がる可能性があります。
これらのスキーマは、成長してからも人間関係や自己認識に影響を及ぼし、新しい経験を歪めて解釈するフィルターとして機能します。 このように、個人の特性と環境の相互作用によって、スキーマはより複雑に形成されていきます。
幼い頃の私たちにとって、これらのスキーマは、過酷な環境を生き延びるための「生存戦略」でした。例えば、親の機嫌を取るために「服従スキーマ」を身につけた子は、そうすることで怒りを避けることができました。また、期待に応えなければ愛されないと学んだ子は、「評価されたいスキーマ」を持つことで、自分なりに愛を確保しようとしました。
これらのスキーマは、その時点では私たちを守るために必要だったのです。しかし、大人になった今、それが私たちを生きづらくする鎖となります。
不適応スキーマ形成のメカニズム「生得的特徴」と「養育環境」
スキーマの形成は、ジェフリー・ヤング博士が指摘するように、個人が生まれながらに持っている気質や特性(生得的特徴)に大きく影響されます。しかし、それは単独で作用するわけではありません。不適応なスキーマは、生まれ持ったこの「体質」が、育った養育環境と複雑に絡み合い、相互に影響し合うことで深く根付いていきます。
この相互作用を理解することで、なぜ同じ家庭で育っても、兄弟間で異なる生きづらさが生まれるのか、が解き明かされます。
この複雑なプロセスは、同じ家庭で育った兄弟でも、全く異なる「生きづらさ」を抱えるのか、一見恵まれた環境に見えても、深い苦悩を抱える人がいるのかを説明してくれます。浅田心療クリニックの院長先生も、この相互作用について次のように述べています。
【補足】 なお、浅田院長先生は発達障害の臨床における著名な専門家であり、その引用は発達障害の生きづらさの複雑性を説明するために行っています。浅田院長先生とスキーマ療法の関連性はございません。
子どもの元来の性分や能力によって、同じ両親から生まれた子どもであっても、これほど違うのかというくらい、同胞の個性が異なることはしばしば生じることです。しかし、生まれついた傾向のみならず、家庭の中で、知らず知らずの間に、その子にどういう役割が付与されてしまうか、また、その子がそういう役割を知らず知らずのうちに積極的に引き受けてしまうかということで、生まれつきの個性の差が、さらに顕著になります。
例えば、両親の喧嘩であれ、母親と祖母との間の嫁姑の骨肉の争いであれ、そうした家庭の中に不和が勃発するとすぐに間に入り、調整役を買って出る子が一方でおり、他方、そういうときには、要領よくサッと自室にもどり、自分の好きなことに熱中したり、勉強やスポーツをしたりして、挙句、成績がよかったり運動ができたりして親にも可愛がられるというような子がいたりということが生じます。
これらのことは一般論として同胞の間にごく日常的に起こるのですが、発達特性を持った育てにくい子が同胞の中にいる場合には、これが、なおさら顕著化します
一つの例として、生得的な過敏さという「体質」と、「いい子であること」を求める親の「土壌」がどのように相互作用し、特定のスキーマが生まれるかを説明します。(これは一つの例であり、このようなケースが絶対ではありません。)
生得的特徴(生まれ持った「体質」):過敏な子ども
生まれつき外界からの刺激や他者の感情に非常に敏感です。
- 感情の読み取り能力が高い: 親のちょっとした表情の変化や声のトーンから、その場の雰囲気を敏感に察知します。
- 完璧主義的傾向: 物事を深く考え、些細な失敗も許せない傾向があります。
- 内向的傾向: 自分の感情や思考を内側に向けることが多く、外に向かって自由に表現することが苦手です。
養育環境(心の成長を左右する「土壌」):いい子を求める親
この親は、子どもを愛する一方で、周囲からの評価や世間体を非常に気にします。
- 無意識の期待: 子どもが「良い成績を取る」「礼儀正しい」「周りの子とトラブルを起こさない」といった行動を無意識に期待し、それが愛する条件であるかのように振る舞います。
- 感情の抑制を促す: 子どもが泣いたり怒ったりする感情的な反応を「みっともない」「我慢しなさい」とたしなめることがあります。これは、親自身の「良い親」というイメージを保ちたい欲求から来ています。
- 条件付きの承認: 子どもが良い結果を出したり、親の期待に応えたりしたときにだけ、大げさに褒める傾向があります。
相互作用のプロセス:不適応スキーマが形成されるまで
この二つの要素が合わさると、以下のような相互作用が生じ、特定のスキーマが形成されます。
- 期待の読み取り: 生得的に過敏な子どもは、親が求める「いい子」のイメージを敏感に察知します。親の期待に応えられないと、親が失望するのではないかという恐怖が生まれます。
- 自己の抑制: 親が感情を抑制するよう促すため、子どもは自分の悲しみや怒り、本来の欲求を「出してはいけないもの」として心に蓋をします。これにより、感情抑制スキーマが形成され、「自分の気持ちを表現すると、親に愛されなくなる」という信念が根付きます。
- 自己犠牲と承認欲求: 親の条件付きの承認を経験することで、子どもは「ありのままの自分では愛されない」と感じます。その結果、他者からの評価や承認を得るために、自分の欲求を後回しにしてでも他者を優先する自己犠牲スキーマや、常に他人の顔色をうかがう評価されたいスキーマが強化されます。
このプロセスを通じて、子どもは「私は、親や他人が求める『いい子』でなければ、愛される価値がない」という深い信念を形成します。この信念は、大人になってからも、人間関係において常に他者の期待に応えようとし、自分自身の本当の気持ちや価値観を見失う原因となります。
この「心の体質」は、服従スキーマ(嫌われたくないから服従する)や欠陥・恥スキーマ(自分には欠陥があるから、そのままでは愛されない)といった具体的な不適応スキーマへと発展し、生きづらさの根源となります。
不適応スキーマ形成のメカニズム「社会的・文化的背景」
不適応スキーマは、単なる個人的な経験だけでなく、その個人が育った地域や文化的・社会的背景や価値観は、無意識のうちに私たちのスキーマ形成に影響を与えます。どのスキーマが形成されやすいか、またどのような対処スタイルが好まれるかは、文化によって大きく異なります。
地域社会と文化的背景
育った地域や文化の価値観は、無意識のうちに私たちのスキーマ形成に影響を与えます。
- 地域社会:経済的な余裕がなかったり、近所の人との助け合いが少なかったりする地域で育つと、自分を守るために、自然と「自分は弱い存在だ」と感じたり、「他人を信じられない」といった「私は弱者だスキーマ」や「不信・虐待スキーマ」が形成されるリスクが高まります。
- 集団主義文化: 日本社会のように、個よりも集団の和を重んじる文化では、「服従スキーマ」や「自己犠牲スキーマ」が強化されやすい傾向があります。「波風を立ててはいけない」「自分の意見よりも、みんなの意見を優先すべき」といった信念が当たり前のように形成されます。
- 「普通」であることの圧力: 「普通でなければならない」という社会的圧力は、個人の特性や多様性を否定し、「欠陥・恥スキーマ」を助長します。人と少しでも違うと「自分はおかしいのではないか」と感じやすくなります。
テレビ、SNS、ゲームなどのメディア
テレビ、SNS、ゲームなどのメディアも、知らず知らずのうちに私たちのスキーマに影響を与えています。
- SNS: SNSでは、成功や幸せ、容姿の美しさなどが誇張して発信される傾向があります。これらを日常的に目にすることで、現実の自分とのギャップを感じ、「欠陥・恥スキーマ」や「評価されたいスキーマ」が強化されます。「みんなとなぜ自分は違うのだろう」と自己肯定感が低下します。
- メディア: メディアで描かれる完璧な人物像は、現実離れした高い基準を私たちに無意識に押し付けます。これにより、「完璧主義スキーマ」が助長され、「理想通りになれない自分」を厳しく罰するようになります。
- ネットいじめや匿名の誹謗中傷:現実の対人関係よりもさらに「不信・虐待スキーマ」や「孤立スキーマ」を生み出すことがあります。ネット上の攻撃は逃げ場がなく、自分はどこにも居場所がないという絶望感を深めることがあります。
不適応な対処スタイル
不適応なスキーマは、感情的な苦痛を防ぐために対処スタイルを作り出す原因となります。これは良いことのように聞こえますが、多くの場合、問題を引き起こします。
対処方法は人によって異なりますが、通常は スキーマによって引き起こされる行動は、主に回避、過剰適応、過剰補償の3つに分けられます。
- 「回避(逃げる)」: あらゆる手段を使って恐怖や苦痛を感じる状況(自分のスキーマ)から回避しようしたり、遮断したりします。これにより、アルコール乱用、無謀な行動、その他の気を散らすような行動につながる可能性があります。
- 「過剰適応」:自分のスキーマに屈し、それが真実であるかのように行動したり感じたりします。 例えば、他人の期待に過剰に応え、自分を犠牲にしたり、自分が愛される価値がないと感じる場合は、無視される関係を受け入れます。
- 「過剰補償」:スキーマによって感じることと反対のことをすることでスキーマを否定しようとします。「愛される価値がない」というスキーマを持つ人が、過剰に攻撃的になったり、支配的になったりする。これは通常「行き過ぎ」です。スキーマのせいで制御不能だと感じる場合は、自分の生活をできるだけ制御しようとして、強迫性障害を発症したり、摂食障害を経験したりすることがあります。
例えば、見捨てられスキーマを持つ人は、見捨てられることへの恐怖から、不適応な対処スタイルを無意識につながることがあります。(同じスキーマを持っていても、同じ行動につながるとは限りません。)
- 関係の回避(回避): 傷つくことを恐れて、そもそも親密な関係を築くことを避けます。恋愛や深い友情から距離を置くことで、見捨てられるリスクを最初からなくそうとします。
- 過剰な依存(過剰適応): 相手に嫌われないよう、自分の意見や感情を犠牲にしてでも相手の期待に応えようとします。これにより、相手との関係を繋ぎ止めようとしますが、結果的に自分を苦しめることになります。
- 相手を試す行動(過剰補償): 相手の愛情や忠誠心を確かめるために、わざと怒らせるようなことを言ったり、別れを切り出したりすることがあります。これは、相手が離れていかないことで安心感を得ようとする、自滅的な行動です。
拒絶への過敏さが示す「心の傷」
生きづらさを抱える方の中には、他者からの拒絶や批判に、他の人よりも極度に、激しく反応してしまうという強い特性を持つ方がいます。この過敏性は、あなたの性格的な弱さではなく、生まれつきの心の特性(例えば、感覚処理の特性や感情の過活動など)が影響している可能性があります。
発達障害ことにASD(自閉スペクトラム症)の子どもは、心のアトピーと言われるくらい、自分と異なる他者や、自分に馴染めない環境に対して、過剰に心の免疫反応が起こります。自己にとって「異物」である他者や、想定外のこと、予定外のこと、馴染めない環境に、行動によるアレルギー反応(癇癪、固まる、逃避する、多動、自傷)を起こすのです。二者関係においてもそういうことが起きるのですから、ましてや、集団においては、そうした反応が大きくなります。
発達障害と集団 – 浅田心療クリニック 院長ブログ
拒絶反応の感度を、見分けることは難しいですが、私の場合は一般的な人からの拒絶より特に重要な他者、大切な人からの拒絶の方がより強い痛みを感じます。普遍的な気分から、大切にしていた物や大切な人を喪失したかのようなひどく深い悲しい気分へと突然変化します。痛みの原因となった人や状況に対して、突然の感情の変化により、ひどく悲観的・否定的に捉えてしまうこともあります。
拒絶や批判を感じたときに、過敏に反応してしまう現象は、拒絶のトリガーが入った時の激しい感情反応(警報の音量)であるのに対し、スキーマはその拒絶が何を示すかについての解釈(警報の内容)です。この激しい警報(過敏な反応)が何度も繰り返されると、この苦痛に意味を与えようとします。そこで固まってしまうのが、自己否定の信念(スキーマ)です。スキーマは、この激しい苦痛に対して、「やはり私には問題があるからだ」という「解釈」を与え、警報をさらに増幅させる可能性があります。
この解釈が複数のスキーマの形成や強化に関わっていると考えられます。以下に例として
欠陥・恥スキーマの警報
「私は根本的に欠陥のある存在だ」「もしこの欠陥が他者に知られたら、軽蔑され、見捨てられるだろう」という信念です。
- 関連性: 拒絶や批判は、このスキーマを持つ人にとって「自分の欠陥が露呈した」という警報となります。その痛みは、単なるショックではなく、「自分の存在価値が脅かされた」と感じるほどの、極めて激しい苦痛として心身を襲います。この激しさが、「過敏さ」として外に現れれます。
見捨てられ不安スキーマの恐怖
「私にとって大切な人は必ず離れていく」「重要な人間関係は長続きしない」という強い不安です。
- 関連性: 拒絶を経験すると、「これでこの人との関係は終わりだ」「私は再び一人ぼっちになる」という根源的な見捨てられの恐怖が瞬時に湧き上がります。この「生存に関わるほどの切実な恐怖」が、反応を過剰にし、激しい不快感や怒り、絶望といった感情的な爆発を引き起こします。
拒絶の過敏さと対処スタイル
この過敏な反応(激しい苦痛)を避けようとして、私たちは無意識に「不適応な対処スタイル」をとります。
- 服従: 「拒絶されたくない」という恐怖から、自分の意見や感情を抑え込み、相手の要求に盲目的に従います。これは、一時的に拒絶を回避できても、自己否定と自己犠牲を深め、生きづらさをさらに強めます。
- 回避: 「傷つくくらいなら」と、親密な関係自体を避けるようになります。
スキーマ モード:生きづらさを生む5つの心のパターン
この生きづらさのパターンを理解するためには、特定の状況で現れる「心の状態」を客観的に認識することが大切です。 これらの心のパターンは、心の地図(スキーマ)と対処スタイルが組み合わさって現れる一時的な感情状態であり、「特定の状況で心の地図が活性化した結果、どんな感情・思考・行動が表れやすいか」を示しています。
「傷ついた子どものような感情」や「自分を責める親のような思考」といった、私たちの中に存在する複数の心の状態(パターン)に気づき、それが生まれた背景を理解することが、自己理解の第一歩です。
これらのパターンを、健全な判断をする自分へと整えていくプロセスを通して、生きづらさは和らいでいきます。これらの心の状態(パターン)を理解するため、ヤング博士や、日本の臨床家は、分かりやすく分類して整理しています。ここでは、筆者の理解を助けた5つの心のパターンの名称を参考にご紹介します。
1. 傷ついた子どものような心の状態
過去のトラウマで深く傷つき、孤独、悲しみ、恐怖、見捨てられることへの不安、無力感などを抱えている、自分の中の脆弱で深い痛みを内在する部分です。
※傷ついた子どもの感情に向き合う際の注意点
スキーマ療法の核となる「傷ついた子どもの感情」に触れる作業は、心の安全を保ちながら進める必要があります。 セラピストのようなサポートがない状態で一人で感情の深い層に触れようとすると、過去の記憶が突然よみがえり、圧倒されるような「感情の洪水」や「フラッシュバック」が起きないよう、感情のペースを管理することが難しくなる場合があります。このため、ご自身の心の状態が不安定な場合は、必ず専門家と共に取り組むことが推奨されます。
2. 自分を責める「親」のような思考パターン
完璧を要求したり、自分自身を批判したり、厳しく罰しようとしたりする思考のパターンです。これは、幼少期に自分を傷つけた大人の声が内面化されたものですが、それだけでなく、心の不安定さを制御しようとする、自己防衛の側面も持ちます。この思考パターンは、不健康な自己批判を永続させる可能性があります。
3. 感情的な苦痛から逃れるための対処パターン
感情的な苦痛から一時的に逃れるための行動パターンです。これには、現実から目を背ける「回避」、他人の期待に過剰に合わせる「過剰適応」、自分を過剰に強く見せる「過剰補償」などが含まれます。怒りや衝動的な行動、依存的な行動(酒や薬、過食、過剰な仕事)、人間関係の断絶などに繋がる可能性があります。
4. 健全な判断をする自分(内なる大人)
自分の中にある、健康で自立した思考の源です。このパターンが機能しているとき、あなたは自分を過度に責めることなく、必要なときに自分自身を労り、その時の自分にとって最も良い選択をすることができます。また、新しい人間関係を築く際に、過去の心の地図に囚われず、健全な境界線を引くことができるようになります。
※これは、完璧で非の打ち所がない自分になることではありません。親や社会が求める「良い子」や「正しい大人」の型にはまることでもありません。は自分自身の心の声に耳を傾け、その時の自分にとって最も良い選択をすることです。今、あなたがあなた自身を責めないことです。
5. 心から喜びを満喫できる状態
心から喜び、遊び、好奇心に満ち溢れている、本来の自分らしさです。傷ついた状態が続くと心の片隅に隠れてしまいがちですが、この状態は、過去の痛みが和らぎ、純粋な自分らしさを取り戻した状態と言えます。
スキーマ療法とは?
心の体質改善
スキーマ療法とは、米国の心理学者ジェフリー・ヤング博士によって1980 年代から 1990 年代にかけて開発された心理療法です。人格障害を含む慢性的な感情的および関係的問題を抱える人々に対する従来の認知行動療法の限界を感じ、認知行動療法では効果の出ない心の深い部分の傷つきやずっと抱えてきた生きづらさなど深いレベルの苦しみを解消するために考案された高度な心理療法です。
ヤング博士は、幼少期に形成された根深い不適応なスキーマ(思考パターン)が、特に人格障害、重度のうつ病や不安症、その他の精神疾患を持つ人々において、幼少期を超えて成人期にまで及び、成人期の健全な機能に支障をきたす可能性があると理論づけました。そして、その影響に効果的に対処できる療法の必要性を認識していました。スキーマ療法は、認知行動療法、精神分析、ゲシュタルト療法、および関連アプローチの要素を組み合わせたものです。
スキーマ療法は、幼少期に形成された不適応なスキーマ(幼少期の否定的な経験・逆境的な経験によって形成された深く根付いた思考と感情のパターン)と対処法を特定し、不適応なスキーマを健全な思考、感情、行動に修正を加えて、自らの生きづらさを理解し、こころの回復力を取り戻すのに役立ちます。
認知行動療法は、現在の思考パターン(認知)と行動に焦点を当て、それらがどのように感情的な苦痛を引き起こしているかを認識し、修正することを目指します。そして、自動思考は、現在の思考パターンの最も顕著な例であり、特定の出来事や状況に直面したときに、意識することなく瞬間的に頭に浮かぶ思考やイメージです。
これに対し、スキーマは、その自動思考のさらに奥にある、より深い信念のパターンです。認知行動療法は心の海に潜る、スキーマ療法はより深海に潜るイメージです。
また、メンタルの問題を顔にできたニキビに、認知行動療法はニキビクリームの役割を、スキーマ療法は食生活や生活リズムの見直しなど体の内側から治していく体質改善の役割に近いとよく例えられます。そのため、スキーマ療法は、心の体質改善とも呼ばれています。
スキーマ療法の適用範囲と有効性
スキーマ療法は、もともとパーソナリティ障害、特に、自分の望む人生を送ることを妨げている根深い感情や行動パターンを持つ人々のために設計されています。これまでの小規模な研究では、この分野での有効性が示唆されています。
スキーマ療法は比較的新しい治療法ですが、従来の治療法では効果が見られなかった慢性的な精神疾患に対処できるとされています。
具体的には、以下のような症状や疾患の治療に用いられ、長期的な回復を促します。
- パーソナリティ障害
- 慢性うつ病
- 不安障害
- 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
- 摂食障害
スキーマ療法は、これらの症状の根本原因である「不適応的なスキーマ(心の地図)」に対処することで、患者がより健康的な対処法を身につける長期的な回復を達成できるように手助けをします。
スキーマ療法の目的は、個人が自分の行動を認識し、その根本原因を理解し、思考や行動を変えて、人間関係の課題や感情に健康的かつ生産的な方法で対処できるようにすることです。つまり、心の地図の根底にある満たされていない心の欲求(幼少期に形成された否定的なパターン)に対処し、幼少期の心の傷を癒すことです。
このようにして、スキーマ療法は、思考や感情、行動を支配するパターンを根本から変えること、感情的な幸福とより健康的な自己関係と対人関係を築き、人生の生きづらさを克服していくことを目指します。
新しい心の地図
※これはあくまで私個人の、特殊なケースです。個人によってそれぞれ異なります。
私の生きづらさの背景には、トラウマだけでなく、発達障害という特性も複雑に絡み合っていました。
発達障害と生きづらさの関係は重要視されています。浅田心療クリニックの院長先生は、大人の発達障害について次のように述べています。
【補足】 なお、浅田院長先生は発達障害の臨床における著名な専門家であり、この引用は発達障害の生きづらさの複雑性を説明するために行っています。浅田院長先生とスキーマ療法の関連性はございません。
つまり、脳の個性に基づく発達障害による生きづらさを、その人なりに凌いでく生き方の蓄積が、10歳以降はその人のパーソナリティを形成します。そこに無理があるならば、しばしばパーソナリティは不安定になります。思春期以降は、さらに、精神疾患が重畳することもしばしばあります。慢性の軽度のうつ病や、パニック障害、場合によっては一過性の精神病も生じることもあります。
つまり、大人の発達障害を診る場合、発達障害の部分だけを見ていても、極めて不十分ということです。健康な側面、パーソナリティの特性、二次的な精神疾患の有無なども含めた立体的な見立てが重要になります。浅田心療クリニック 院長ブログ 大人の発達障害について
心の地図が歪んでいると、「頭ではわかっているのに、なぜかできない」という葛藤が生まれます。私自身も、頭ではわかっているのに、どうしても今の自分を肯定することができませんでした。それはスキーマという無意識の糸に操られている、操り人形のようでした。
これまで自分を守る過程で身に付いたスキーマの中で生かせるもの、修正した方がいいものを見極め、修正するのなら、どのように変えていくのか、新しいスキーマを自分の中で書き換えていく必要がありました。この作業は、まるで歪んでしまった自分を、もう一度、育て直すような感覚でした。
少しずつ、自分を苦しめていた古いスキーマを特定し、新しいスキーマに書き換えていきました。
私の場合は、「どんな人とも努力すれば分かり合える」という家庭の教えがありました。それ故、どんな人との関係も私が努力して歩み寄れば、うまくやっていくことができると信じていました。それはまるで、地図に「どんな道もまっすぐ進めば目的地に着く」と書かれているかのようでした。しかし、現実の世界には曲がりくねった道や、立ち入り禁止の場所もあって、その地図通りに進もうとするたびに、私は迷い、傷つき、引き裂かれていきました。
教えに従い、傷つきながらも人間関係を維持しようとしてきた幼い私に、そっと手を差し伸べ「あなたは一人で泣いていたんだね。自分を守るために必死だったんだね。」と語りかけました。
「スキーマ療法は、私自身の『心の地図』を書き換えるプロセスでした。かつて私を縛っていた『どんな人とも分かり合える』というスキーマに、私は『人はそれぞれ生きる目的が違うのだから、価値観(基準)が違えば、良い悪いで判断できるものではなく、現実には分かり合えない人はいる。』という現実的な道筋を書き加えました。
道のない場所に立ち尽くしていた幼い私と私の目の前に進むべきかもしれない新しい道が見え始めました。私達は手を繋いで一緒に歩きだしました。
これまで私を縛ってきたスキーマ(複数のスキーマ)
「見捨てられ不安」:「私には大きな欠陥があって、もしそれがバレたら、誰も私を受け入れくれなくなる」「周りの人や頼れる人はいつか私のもとを去っていくかもしれない」
「欠陥性と恥」:「私はなんで、他の人と同じようにできないんだろう。私は人と比べて劣っている。私はそれを受け入れられない」「自分は劣っている。自分は生きる価値がない」
「完璧主義スキーマ」:「不完全な存在な私を私は赦せない」「完璧にしないといけない」
「服従スキーマ」:「否定されたくない」「人から嫌われてはいけない」「嫌われないためにいい人を演じないと」
「自己犠牲スキーマ」:「自分が何とかしないといけない」
「評価されたいスキーマ」: 「人から嫌われていないか」「認められたい」
「感情抑制スキーマ」:「自分の気持ちを抑え込まないといけない」
(「私の価値は、他人の評価で決まるものではない」「自然に身を任せよう、自分の気持ちに正直に生きよう」「必要な時は人に頼ろう」「時には無理せず、肩の力を抜こう」「私は私なんだ」etc)という新しいスキーマなどに、ひとつひとつ書き換えていきました。
それはまるで自分という大きな心の地図に新しい青い絵の具で古い地図の場所を地形に合うようにより深く描き直す作業でした。これまで見えなかった景色や、たどり着けなかった目的地を発見する旅でもありました。
新しいスキーマに書き換えたことによって、心のレンズが調整(リフレーミング)され、レンズを通して見えていた世界に変化が生じました。物事の見方を変わったことで、私の感情や行動も良い方向に変化していきました。
「本当の私」で一緒にいて、もし関係が切れてしまうのであれば仕方がない。私のことを嫌う人がいても、愛してくれる人もいる。あの人とうまくいかなくてもいい。あの人の機嫌を取る必要はない。みんなと違ってもいい。と思えるようになりました。
※「私個人のサンプル」であり、「治療計画」ではありません。この書き換えは一晩で終わる魔法ではありません。重要なのは結果ではなく、新しい一歩を踏み出し続けるプロセスです。自己判断による強い感情への不用意な接触は、再トラウマ化のリスクを伴います。
スキーマ療法と対人関係
対人関係に関しては根底に「見捨てられ不安スキーマ」があり、そこに第三領域「表現の自由」スキーマの「服従スキーマ」、「自己犠牲スキーマ」、「評価されたいスキーマ」が相互に複雑に絡み合っていました。
拒絶されるのではないかという恐怖から、自分の本当の気持ち、弱い自分、ダメな自分を隠して一番の関心事は人に受け入れられるかどうか、人に嫌われていないかどうかということになっていきました。自分の言動が誰かにどう思われるか、相手の意図や考えがよくわからない、常にざわついた不安がつきまといます。
他人の感覚や感情に振り回され、自分の選択に自信が持てなくなり、「どうすれば正解なのか」と常に正解を探し求めるようになりました。人の評価や顔色、成功、失敗といったものに翻弄されるうちに、自分の感覚で生きれなくなってしました。良い人を演じているために、慕われたりすることもありますが、そこから抜け出せません。
以前の私は受け身的なコミュニケーションであり、他人の意見を尊重する一方で、自分の意見や気持ちを伝えるのを恐れていました。また、他の人の言葉や行動に敏感に反応し、落ち込んだりしてしまったり、周りの状況や顔色を把握して、本当は望んでいないのに、自分より相手の事を優先して動いていました。
スキーマ療法を通して、相手の意見や感情を尊重しつつ、自分の意見や感情を正直に意識して表現するようになっていきました。自分の気持ちを我慢することが減り、精神的なストレスも減ったように思います。困ったことがあったとしても気軽に周りに相談できるようになり、少しずつ、自らの意志で自由に行動できるようになりました。
スキーマを手放すことは、過去の私を捨てることではありません。かつて私を守ってくれたスキーマ(わたし)に感謝を伝え、これからは、新しいスキーマ(あなた)と共に生きています。今の私を、そして未来の私を優しく守ってくれています。
𝄇 Rewrite
新しいスキーマの書き換えは、一度きりではありません。新しいスキーマを定着させるために、新しいスキーマを意識し、これまで歩いてきた慣れた道ではなく、新しい道を選ぶように、日々の生活の中で何度も選択していく必要があります。もちろん完璧にうまくいく日ばかりではなく、選択に迷うこともあります。
選択を通して自分の感覚が戻り、自分の感覚を信じられ、ありのまま自分として生きることに繋がります。もしかしたら、「新しい心の地図」がうまく機能しない場面がでてくるかもしれません。その時は一度立ち止まり、新しいスキーマの修正が必要かどうか、検討する必要があります。地図はあくまで道具であり、現実(地形)と照合し、必要に応じて描き直すことも時には必要だと感じます。
スキーマ療法は、完璧な地図を手に入れることではなく、私自身が自分の地図を書き換えられる力を得たことに気づきました。
私はずっと自分をひたすら責めていました。スキーマという概念があって、自分の努力不足ではないんだと知れただけで気持ちが楽になりました。また、古い心の地図が反応しているなと意識するだけで、気持ちに余裕が生まれました。無意識はどうすることもできませんが、意識して何かできるのではないかと感じます。
18 個の不適応スキーマ
子どものころの感情的ニーズが満たされないと、不適応なスキーマが形成されることがあります。18個の不適応スキーマはほとんどの人は 1 つではなく複数のスキーマを形成する傾向がありますが、それらには特定の共通した特徴があります。これらは、自分自身や他者との関係に対する見方に関係しています。
18のスキーマリストを読み進める前に:自己探求のための重要なお知らせ
この記事で紹介する18個の不適応スキーマのリストは、決してあなたにレッテルを貼るためのものでも、あなたの価値を決めるものでもありません。あなたの心は、複数のスキーマが複雑に絡み合い、常に変化しています。あなたの人生の複雑さは、この18個の箱には収まりません。
自分の状態を特定のスキーマ名で断定してしまうと、場合によっては、新たな心の呪縛(スティグマ)となり、かえって生きづらさを深める可能性があります。
【自己探求のための重要なルール】
- これは診断ツールではありません。 スキーマリストは、あくまで自己理解のための参考情報です。医療的な診断は、必ず専門家から受けてください。
- 一人で抱え込まないでください。 ご自身の心の状態を決めつけたり、深刻に受け止めたりすることは避けてください。もし当てはまるかもしれないと思うスキーマが見つかって心が揺れ動いたら、一人で問題を抱え込まず、信頼できる人や専門家に相談してください。温かい飲み物を飲む、好きな音楽を聴く、親しい人に電話するなどの方法で心が落ち着くことがあります。
- 全部読む必要はありません。今の自分に関係がありそうな項目だけ、あるいは1つだけ選んで読んでみてください。
この記事では、より直感的に理解しやすいよう、ジェフリー・ヤング博士が提唱した18の不適応スキーマの正式名称スキーマの名前を一部変更しています。変更前の正式な名称については、『』併記しています。
第一領域「安全な愛着と安心感」
- 「見捨てられスキーマ」: 親しい人との関係がいつか終わってしまうのではないか、相手を失ってしまい、最終的に自分は一人になるのではないかという不安に襲われ、恐怖を感じる。
- 「不信・虐待スキーマ」: 他者が何らかの形で意図的に自分を利用したり、傷つけたり、騙したりするのではない、他人が親切にしても、その裏に悪意があるのではないかと身構え、不信感や警戒心から心を閉ざしてしまう。
- 「愛してもらえないスキーマ」/『情緒的剥奪スキーマ』: 誰も自分を愛してくれないだろうという他者によって決して満たされることのない空虚感が続き、「自分は愛される価値がない」と感じてしまう。
- 「欠陥・恥スキーマ」: 強い羞恥心や自己嫌悪を感じ、もし他者が自分の「本当の姿」に気づいたら拒絶されるという恐怖が湧く。
- 「孤立スキーマ」/『社会的孤立/疎外スキーマ』: 大勢の中にいても、内面で深い孤独感や疎外感を感じ、「自分だけが違う」と自分は世界から孤立している、他の人々とは異なっている、そして、どのグループやコミュニティにも属していないという感覚に襲われる。
第二領域「自律性、有能性、自己同一性の感覚」
- 「無能・依存スキーマ」私は一人では何もできない。自分は日常生活を一人で適切に処理する能力がないという信念。意思決定や新しいタスクの開始などの分野で、過度に他人の助けに頼ることがよくあります。
- 「私は弱者だスキーマ」/『脆弱性/病気への恐怖スキーマ』: 私は弱い存在ですぐやられる。自分は常に大きな災害 (経済的、自然的、医学的、犯罪的など) に見舞われる寸前であるという信念。常に何か悪いことが起こるのではないかと過度に心配し、日々の生活に強い不安や恐怖を抱えています。
- 「巻き込まれスキーマ」/『巻き込まれ/未発達な自己スキーマ』: 誰かに同調できないと安心できない。他者(通常は親や恋人)との感情的な結びつきが強すぎて(巻き込まれており)、自分自身の考えや感情、興味がはっきりせず、「自分がない」と感じてしまう。自分が何をしたいのか、何を感じているのかが分からず、まるで他人の人生を生きているかのように感じることがあります。
- 「失敗スキーマ」: 私は何をやっても失敗する。仕事、学校、スポーツなどの分野で、自分は仲間ほどの成果を上げることができないという信念。自分が愚かで、才能がなく、能力が低いと感じており、新しい挑戦に対して強い不安や恐怖を抱きます。たとえ成功しても、それを自分の実力とは認めず、まぐれや運が良かっただけだと考えがちです。
第三領域「表現の自由」
- 「服従スキーマ」: 嫌われたくない、怒られたくない。 否定的な結果(怒り、拒絶、罰など)を避けるために、自分の本当の気持ちや意見を抑え込み、他人の支配に従わなければならない(服従しないといけない)と感じている。
- 「自己犠牲スキーマ」: 自分よりも他者を優先するべき。他者のニーズを満たすために、自分自身の感情や欲求を過度に犠牲にすることが正しいという信念です。自分のニーズよりも他人のニーズを優先します。自分のニーズを大切にすると罪悪感を感じやすく、他者を助けることで自分の価値を見出そうとします。
- 「評価されたいスキーマ」/『承認探索/評価追求スキーマ』: 私の価値は他者の評価によって決まる。自分の本当の欲求や自己意識を犠牲にしてでも、他人からの承認や認知を得ることに過度に重点を置くという信念。自分の行動や存在意義を他人の評価で決めてしまいます。
第四領域:「自発的で自由に遊べる能力」
- 「否定・悲観スキーマ」: どうせいいことなんてない。人生の否定的な側面に焦点を当て、肯定的な側面を軽視するという信念。否定的な詳細や将来の潜在的な問題を非常に気にしているため、人生でうまくいっていることを楽しめません。物事がどれだけ順調に進んでいても、失敗する可能性を心配します。
- 「感情抑制スキーマ」/『情動抑制スキーマ』: 感情を外に出さない方がよい。感情を感じたり表に出すことを恐れている。感情を表現すると他人を傷つけたり、恥ずかしさ、報復、自尊心の喪失、見捨てられることにつながるため、自発的な感情や衝動、特に怒りや悲しみを抑えなければならないという信念。
- 「完璧主義スキーマ」/『高い基準/完璧主義スキーマ』: 完璧にしないといけない。何をしても十分ではない、常に完璧でなければならないと極めて高い基準を持ちそれを自分自身に課す信念。能力に対する極めて高い要求を満たしたいという願望であり、通常は自己批判を避けるためです。自分や他人を厳しく評価し、その基準を満たすよう、行動するべきと考えている。
- 「罰スキーマ」/『懲罰性スキーマ』: 失敗したら罰を受ける。: 間違いを犯した人は厳しく罰せられて当然だという信念。自分自身や他人に対して過度に批判的で、容赦がありません。
第五領域:「適切な境界線と自己制御」
- 「俺様・女王様スキーマ」/『権利意識/尊大さスキーマ』: 私は特別な存在だ。自分は特別な存在であり、他人を傷つけるかどうか、他人にとって合理的かどうかに関係なく、自分が望むことは何でもすぐに実行、発言、所有できるはずだという信念。他人が何を必要としているかに興味がなく、自分の欲求を最優先に行動します。
- 「コントロール不能スキーマ」/『自己制御/自己規律の不足スキーマ』: 我慢なんてしないで自分の好き勝手やりたい。目標達成に向けた欲求不満に耐えられず、自分の感情や衝動を抑制できないという信念。自分を律することができず、短期的な快楽を優先し、自分の行動が長期的にどのような悪影響をもたらすかを十分に考慮できません。自制心が極端に欠如している場合、中毒性の行動を行う可能性があります。
信頼できる旅のガイド(専門家と取り組む本質的な価値)
スキーマを変えるという選択は、必ずしもすべての人にとって最良の道ではありません。スキーマを変えずに人生を過ごす人はたくさんいます。スキーマを変えることは、新しい道を探す旅のようなものです。誰もが旅に出る準備ができているわけではありません。今の場所にとどまる方が、旅の不安よりも心が安らぐ人もいらっしゃいます。スキーマは、幼い頃の経験から無意識のうちに作られた『心の地図』のようなものです。スキーマは専門的な治療だけでなく、誰かと心を通わせて話すことや、一冊の本(感動をしたり、深い内省を得られるなど)との出会い、ブログや日記、アート・音楽で言葉にできない深い悲しみや怒りを、色、形、音として表現すること、日々の小さな気づきなどによっても、ゆっくりと優しく変わっていくことがあります。
また、スキーマ療法は、すべての人に効果があるわけではありません。短期間で効果が出るとは限りません。ですが、これは自身の心の地図を理解し、新しい道を切り拓くための羅針盤となります。過去から続く生きづらさの連鎖を断ち切り、より健康で満たされた人生を自ら創造していく旅です。旅に出る際は、信頼できる旅のガイド(専門家)と共に歩むことをお勧めします。
このブログ記事で紹介しているスキーマ療法は、過去の辛い体験と向き合うため、心が大きく揺れ動き、感情が溢れ出すことがあります。過去を思い出し涙したり、怒りを感じたりと、精神的に大きな負担を感じることがあります。事前にいくつかの注意点を理解しておくことが重要です。
- 専門家への相談を第一に:すべてのトラウマや精神疾患に適用できるわけではありません。過去の強烈なトラウマや精神的な不安定さを抱えている方、解離症状を伴う方は、自己判断で実践することは心の状態を悪化させる危険を伴います。必ず、信頼できる専門家(臨床心理士や精神科医など)に相談することを強く推奨します。
- 心の安全対策: 心が辛くなった時に自分を落ち着かせることができるコーピング(ストレス緩和)方法をいくつか用意しておきましょう。それはあなたが弱いからでも、おかしいからでもなく、自然な心の反応です。
- マインドフルネスの注意点: 過去のトラウマ体験が強烈な場合、マインドフルネスがかえってフラッシュバックや感情の過剰反応を引き起こす可能性があります。心の準備ができていない段階で、過去に意識が向きやすいマインドフルネスを行うことは専門家の指導なしに避けたほうがよいでしょう。
- 強いトラウマやPTSDがある場合は、マインドフルネスを始める前に、必ずトラウマ治療の知識を持つ医師や心理士に相談し、指導と監督のもと行うべきです。
とにかく、ひとりぼっちにならないことですね。自分ひとりでスキーマ療法に取り組むのは、ものすごく骨の折れることですし、リスクも伴います。スキーマに向き合うことは、すなわちこれまでの人生で蓋をしてきたトラウマに向き合うことなので、場合によっては生きていることが辛くなってしまうこともありますから。
だから、セルフで取り組まれる皆さんには、どうか孤独な状態で進めることだけはしないで、とお伝えしたいです。身内でも友人でも、SNSでつながった仲間でもいい。ペットでも推しメンでも、何だってかまいません。とにかく、自分を支えてくれる存在、サポート係となる存在をそばにおいてほしいなと思います。
心の声に耳を傾け、生きづらさを手放してゆく。人生の質を高めるための「スキーマ療法」とは 伊藤 絵美先生
私が本当に求めていたのは、それは、「この痛みは、この私は、存在していいんだ」と無条件で受け止めてもらえる、繋がり、人の温もり、優しさでした。
絶望の淵に居たときに本当の自分とつながりたい、自分のために生きたい、あなたへ。生きづらさと「スキーマ療法」①の物語の登場人物の「あなた(特定の誰か)」からの無条件の愛を受け取っていくことで心の傷が癒えてえいきました。
あくまでこれは私の場合ですが、私のスキーマ療法はそこからがはじまりだったように思います。
私はスキーマ療法において、ありのままの自分として、信頼できる相手と「心のつながり」を築くこと、そして、その上で心地よい「一体感」を持てる場所を見つけることが大切だと思います。安心して寄り添ってくれる存在と共に歩むことが最も大切だと感じます。
セルフヘルプ本や独学に関しては、この地図の存在に気づく手助けにはなりますが、深い傷と安全に向き合うためには、誰かの支え(サポートネットワーク)が不可欠だと私は感じています。
ジャーナリング
ジャーナリングは、自分の思考や感情を自由に紙に書き出すことで、心を整理し、自己理解を深めるための実践的な方法です。日記とは違い、過去の出来事を記録するだけでなく、頭の中に浮かんだこと、感じていること、未来への希望などを、形式や文法にとらわれずに書き連ねていくのが特徴です。
ジャーナリングは、心の声に耳を傾け、自分の内側で何が起こっているかを理解するための強力なツールです。ノートとペンを手に取り、自分の思考や感情をありのままに書き出すことで、その存在に気づき、無意識に繰り返している心のパターンを客観的に見つめることができます。
ジャーナリングを通じて、自分自身と対話する習慣が身につきます。自分を責めることなく、労わり、励ます言葉を書き加えることで、健全な自己対話が育まれ、自己肯定感を高め、心のパターンを整えることにつながります。(日常生活の「小さな気づき」と「意図的な選択」が大切だと私は感じます)
ジャーナリングを始めるためのヒント
- ルールを決めない: 誤字や文法を気にせず、頭に浮かんだことをそのまま書き出しましょう。誰かに見せるものではありません。
- 感情に焦点を当てる: 「今、私はどんな気持ち?」と自分に問いかけ、感じている感情(不安、怒り、悲しみ)を言葉にしてみましょう。
- 問いかけを活用する:
- 「この出来事に対して、なぜこんなに辛いんだろう?」
- 「本当は、どうしたかった?」
- 「過去の自分に、今、どんな言葉をかけてあげたい?」
- 肯定的な言葉で締めくくる: ジャーナリングの最後に、「今日もよく頑張ったね」「大丈夫、私はここにいるよ」といった、自分自身を労る言葉を書き添えることで、心の安全を確保しましょう。
※心や体は日々揺れ動いています。状況やタイミングによっては書くことや話すことで感情が悪化したり、トラウマ体験をより鮮明に思い出して辛くなる可能性があります。特にトラウマが深刻な場合は専門家と相談しながら行うことを推奨します。
※スキーマ療法の現実的な課題
スキーマ療法はとても強力な心理療法ですが、すべての病院やカウンセリングルームで受けられる標準的な治療法(主流)ではありません。その専門性の高さから、現在もこの療法を実践できる専門家は限られています。
また、この療法は保険適用外(自由診療)となることが多く、長期にわたる治療には経済的な負担が伴う傾向があります。そして、すべての心理療法と同様に、すべての人に同じ効果があるわけではなく、回復には時間と根気が必要です。
スキーマ療法の中で、今回触れられなかった内容があります。
筆者の体験をスキーマ療法に当てはめて物語として紹介しています。
本当の自分とつながりたい、自分のために生きたい、あなたへ。生きづらさと「スキーマ療法」①
記事で取り上げた激しい感情的な反応は、近年、ADHDなどの特性に伴う 「拒絶感受性不快感(RSD)」 として焦点が当てられています。RSDの具体的な症状や、構造については、別記事で詳しく解説しています。
心の傷つきやすさ ADHDに伴うRSD(拒絶感受性不快感)極度の感情的な痛み
スキーマ療法の専門的な概念について、さらに詳しく、信頼できる情報源をご参照されたい方は、インターネット上のウェブサイトや学会資料をご確認ください。
※全体を通して、これはあくまで私個人的な考えや体験であり、生きづらさに対する感じ方、道は人それぞれ異なります。
本記事は医療行為ではありません。筆者は医師、公認心理師等の医療資格を有していません。精神疾患の診断や治療は専門医療機関にご相談ください。
参考ページ・参考書籍
スキーマ療法|Psychology Today 様
スキーマ療法: 主要な概念と実際の応用|BAY AREA CBT CENTER様
スキーマ療法の知識、概念、起源、定義など視点を変えて再度学習|メンタルケア研究室様
誰にでもある18の早期不適応的スキーマの強弱!概念と特徴の一覧|メンタルケア研究室
HPを参考に作成しています。
心の体質改善「スキーマ療法」自習ガイド
自分でできるスキーマ療法ワークブック Book 1 生きづらさを理解し、こころの回復力を取り戻そう
自分でできるスキーマ療法ワークブック Book 2 生きづらさを理解し、こころの回復力を取り戻そう

